ジョーンズ ラング ラサール(JLL)は7月20日、同社が2年おきに実施している「グローバル不動産透明度インデックス」の2016年版調査結果を公表した。日本市場に対する評価は、総合ランキングで世界19位。REIT(不動産投資信託)市場の拡大などが貢献し、2014年の26位から大きく順位を上げた。

 調査は1999年から開始した。各国に展開するJLL、LaSalle Investment Managementのスタッフによる調査と、投資家などへのアンケートを組み合わせて実施している。今回は世界109カ国・地域が対象だ。総合1位となった英国をはじめ、上位10カ国が透明度「高」のグループを形成。19位の日本はデンマーク、ノルウェーといった国とともに、これに次ぐ「中高」グループに位置している。

2016年版グローバル不動産透明度インデックス(一部。資料:JLL)
2016年版グローバル不動産透明度インデックス(一部。資料:JLL)

 過去3回の日本は総合順位で26位、25位、26位と、先進国としては一貫して低い水準にとどまってきた。その順位向上に貢献したのが、価格情報の入手性などを評価する「市場ファンダメンタルズ」分野でのスコアアップだ。

 JLLは139の調査項目を基に5つの分野(サブインデックス)ごとにスコアを算出。一定のウェートを掛け合わせて総合順位を発表している。「市場ファンダメンタルズ」での高評価は、物流やヘルスケア分野でREITの上場が相次ぎ、伝統的な投資セクターであったオフィスビルや賃貸マンション以外での情報開示が進んだことが関係しているという。ただし、大きな改善が見られたとはいえ、この分野で日本のランクは41位。まだ、ほかの先進国に比べて大きく劣っている。

 英国から発表会に参加したJLLのDirecter of Global Research Programs、Jeremy Kelly氏は、スコア上位の国・地域の多くが土地建物登記に際して取引価格開示を義務付けていることを指摘した。いわゆる「パナマ文書」事件を受け、同国ではSPC(特別目的会社)のオーナー情報開示をめぐる議論も進んでいるという。

 日本法人のリサーチ事業部アソシエイトダイレクター、大東 雄人(おおひがし ゆうと)氏も、賃貸契約も含めた取引価格情報の開示義務付けに踏み切った台湾の事例や、インド、ベトナム、ケニアといった途上国でも政府によるデータベース構築が進んでいることを指摘。一層の透明性向上に向けた日本国内での議論を促した。

 なお、JLLが同時に発表した「不動産サステナビリティ透明度インデックス」では、日本はフランス、オーストラリア、英国とともに「高」にランクし、上位グループの仲間入りを果たした。調査対象は37の国と地域。2016年2月に国土交通省が公開したグリーンリース(環境配慮型の賃貸借契約)に関する指針や、同4月から実施された建築物の省エネ性能表示(BELS)などの取り組みが評価された。