国内の不動産市場で、1000億円以上の大型不動産取引が急増していることが、日経不動産マーケット情報の調べでわかった。過去5年半の間に、本誌が記事を掲載した1000億円以上の取引は19件。このうち10件を、過去1年以内の取引が占めている。2007年9月、立て続けに起きた虎ノ門パストラルホテル、銀座東芝ビルなどの取引は、こうしたトレンドを象徴する事例だ。

 同月、三菱地所と平和不動産も北新宿の再開発用地を約1150億円で落札した。三井不動産は日比谷エリアの不動産開発を視野に、帝国ホテルの株式33%を約860億円で取得した。米国系の物流施設運営会社であるプロロジスは、約850億円で松下ロジスティクスの17拠点を取得した。市場は、かつてない大型取引ラッシュを迎えている。

 別掲の表には、物件金額で上位30件までの大型取引をまとめた。調査対象は2002年の創刊以来、本誌で取り上げた約8000件の事業用不動産の売買事例だ。企業が発表した事例のほか、本誌の取材によって金額を把握した事例も含んでいる。

 最も高額だったのは、JR大阪駅北口に広がる再開発地域、梅田北ヤードのA・Cブロックで、三菱地所やオリックス不動産などが参加する企業連合が2006年11月に落札した。価格は約3100億円とみられる。第2位は2007年4月にモルガン・スタンレーグループが取得した全日本空輸系のホテル13物件で、約2813億円だった。約2300億円の虎ノ門パストラルホテルが第3位となった。主な買い手は三菱地所や森トラスト、東急不動産などの総合不動産会社だが、モルガン・スタンレーグループやダヴィンチ・アドバイザーズなどのファンドも目立つ。

 調査対象とした5年半は、90年代初頭のバブル崩壊から続く長い調整過程を終え、不動産市況が都心部から徐々に回復に転じた時期にあたる。期間中は、海外からの投資流入やREIT(不動産投資信託)の上場を背景に、不動産市場が拡大を続けてきた。米国のサブプライムローン問題で世界的な信用収縮が懸念されているが、今のところ、日本国内の市況に大きな影響は出ていない。