建築環境・省エネルギー機構(IBEC)は、11月5日から建物の環境認証制度「CASBEE(キャスビー)不動産マーケット普及版」(以下、CASBEE普及版)の先行認証を開始する。10月16日から事前相談を無料で受け付ける。2013年3月29日までの先行認証期間中は、オフィスビルを対象として1物件7万円の割安料金で認証を実施する。

 2013年度(2013年4月以降)の本格運用開始を前に、先行認証によって評価や審査のノウハウを確立するとともに、CASBEE普及版の知名度を一気に高める狙いがある。先行認証期間中に100物件以上の実績を上げることを期待している。

 当面、竣工後1年以上を経過した建物について申請を受け付ける。先行認証の期間中は建築主や所有者などの申請者が評価要領に従って建物を自主評価し、根拠となる資料を付けて書類をIBECに提出する。IBECはこれを審査し、点数に応じて認証を付与する手順だ。上から順にS、A、B+、B-、Cの5段階の格付けを付与する。条件を満たさない建物は認証外となる。認証結果は原則として公表する方針だ。申請したものの、不本意な評価結果になったときなどは申請を取り下げることができる。その場合、評価結果は公表しない。

 CASBEE普及版は従来のCASBEEと比べて、(1)項目が少なくて評価が容易、(2)評価・認証にかかる時間が短い、(3)認証費用が安い、(4)海外でも通用するように評価項目を共通化――といった特徴がある。本格運用時の認証費用は、認証機関や建物規模によって異なることが予想されるが、IBECが認証する場合は建物規模に応じて10万円~20万円程度になる見通しだ。2013年度以降は、商業施設や集合住宅なども順次、評価対象に加えていく計画だ。

 日本における不動産分野の環境認証は、金融機関が先導する形で2011年から需要が拡大した。金融機関の認証制度が顧客のビルを対象とするのに対して、CASBEE普及版は誰でも認証取得に挑むことができる。IBECが制度の開発段階で実施したケーススタディーでは、築50年以上でもAランクの評価を得たビルがあった。

 CASBEE普及版の評価制度の概要は、日経不動産マーケット情報2012年7月号で読むことができる。

CASBEE普及版によるオフィスビル約60物件のケーススタディー。東京ビルヂング協会・地球環境委員会の一部企業の協力を得て、建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が評価した。建築経過年数が数十年のビルでも改修によって性能を維持し、AやB+の評価を受けている(資料:IBEC)

<追加情報>
初出時に「既存建物だけでなく、計画段階の建物も評価の対象とする」と記しましたが、IBECが11月2日に方針を変更したことを受け、評価対象に関する記述を「当面、竣工後1年以上を経過した建物について申請を受け付ける」と修正しました。
(2012年11月5日 14:50)