MIPIM(ミピム)では派手な展示ブースに目を奪われがちだが、これと並行して行われるコンファレンスの数も毎年増加している。ちなみに、オフィシャルなもので今年は総計70あまり。ブース周りなどで参加対象を絞って行われるプライベートなものを含めるとその5倍以上に達するだろう。

 なかでも、つねに満場の関心を集めているのが、物流施設関連のコンファレンスだ。会場の一角に設けられた「ロジスティックパビリオン」では、一日20件のプレゼンテーションや商談のセッションが設けられ、関係者の交流ハブとなっている。会期初日には、この場所で大手資産運用会社のAEW Europeが、3件、合計10億ユーロの物流施設ファンドを発表。同社のファンドマネジャー、Remy Vertupier氏らはパネルディスカッションで展望を語った。

物流施設に関するパネルディスカッションの様子。今年のMIPIMでは同セクターが大きな関心を集めている。

 2006年にいったんブームとなった欧米での物流施設は、最も金融危機のあおりを受けた不動産セクターだった。しかし2010年以降に復調し、今後は大きい伸びが予想されている。近年の傾向としては、デリバリー先により近い都市近郊の物件が求められていることだ。これは人口の高齢化や都心部での車利用の規制などを背景にEコマースが増え、より早く効率的、かつ運送コストの低いデリバリーが急務となっているためだ。

 このため「箱」としての機能よりも、機動的な配送に必要な最新設備が求められている。また、変化する流通システムにあって、米アマゾンに限らず、多様なカスタマーニーズを汲み取ってゆく敏速な市場対応力も重視されている。フレキシビリティ、サステナビリティ、そして、イノベーションが今後の物流不動産の3大キーワード。一方で、港や空港に近い物流施設も依然として重要で、これらと都心近郊の物流施設を合わせた展開が有効だという。

篠田 香子=フリーライター