仏カンヌで4日間にわたって開催された世界最大の不動産会議MIPIM(ミピム)が3月13日、閉幕した。参加者数は2万2000人に達し、昨年を1500人上回る盛況ぶりをみせた。ギリシャ危機はまだくすぶっているが、欧州経済をけん引するドイツとイギリスだけでなく、スペインやイタリアの市場センチメント回復も著しい。
数多くの企画の中で、プログラムの目玉となったのが「Digital REvolution」、つまりITと不動産(Real Estate)ビジネスとの融合に関する一連のセッションだ。米国を中心に盛り上がる不動産ベンチャーの起業ブームを受けて、Digital REvolutionは会社の看板と人間関係で成り立ってきた伝統的な不動産業界に新風を吹き込もうとしている。
例えば、ネットを使って不動産プロジェクトの資金を募る「クラウドファンディング」、不動産に関する価格情報などをサービスの参加者から集積する「クラウドソーシング」、所得や犯罪率などの公開情報を統合して市場調査用に提供する「オープンデータ」、遊休化した部屋を短期貸しする「シェアリングエコノミー」など、様々な不動産向けソリューションがMIPIMのステージで紹介された。3Dゴーグルやセンサーを使った技術も取り上げられていた。
Digital REvolutionのテーマで最も多くの参加者を集めたのが、3月11日に行われた米国と欧州、南ア、中国の8社によるビジネスコンテストだ。各社4分間ずつのプレゼンの後に、3人の審査員とライトスティックを持った聴衆の投票によって勝者が決まる。
テナントの発見から契約まで最短48時間
勝ち抜いたのは英国のベンチャーであるAppear Hereだ。同社は空き店舗をネット上に公開して、短期貸しするサービスを発表した。通常はテナントの発見から契約まで平均数カ月かかるのに対し、同社のサービスは最短48時間で契約まで完了するという。3カ月から半年の短期貸しが中心だ。個人の部屋を旅行者に貸し出すサイトを提供し、すでにシェアリングエコノミーの代名詞となっている米Airbnb(エアビーアンドビー)の店舗版ともいえる。
「デジタル革命はまだ初期段階だが、クラウドファンディング市場の成長に見られるように、その役割は日増しに高まっている。MIPIMはデジタル分野と不動産業界の橋渡し役を務めていく」。主催者である仏Reed MIDEMのMIPIM責任者、Filippo Rean氏はこう語った。
3月12日の夜には恒例の建築コンテスト、MIPIM Awardの授賞式が行われた。過去最多の応募プロジェクトに混じり、日本からは大手町タワーと虎ノ門ヒルズもノミネートされたが受賞は逃した。
Best Innovative Green Buildingには、積水ハウスがシンガポールのFrasers Propertyと共同開発したシドニーの高層マンション、One Central Parkが選ばれた。隈研吾氏を含む審査員に、巨大なひさし状の構造物や太陽光を集積する装置など、最先端の環境設計が評価された。