緊急事態宣言が明けた10月、日本有数の繁華街である銀座にも徐々に人出が戻りつつあります。東京都のウェブサイトによると、10月上旬の夜における銀座の人出は、コロナ禍前の半分程度。いっときの7割~8割減から大きく改善しました。本格的な回復にはもう少し時間がかかりそうですが、すでにラグジュアリーブランドは未来に向けて動き始めています。富裕層の高い購買意欲も背景に、好立地の物件を早めに確保する動きが顕在化。一等地に限るものの、店舗の新規開業が続いています。明るさが見え始めた賃貸市場とは裏腹に、売買市場は湿りがちです。売り物件は少なく、価格も高止まりの状況です。日経不動産マーケット情報2021年11月号は、そんな銀座の不動産市場を解説しました。どこでどのような取引や開発があるのかも、地図と表にまとめています。ぜひご覧ください。

 マーケット全体を俯瞰してみると、2021年第3四半期(7月~9月)の売買高は、本誌調査ベースで9094億円になりました。前年同期に比べて26%の増加です。REITによる取引や、事業会社の資産売却の動きが目立ちました。11月号掲載の売買事例分析では、こうした状況を詳しく解説するとともに、主な大型取引やオフィスビルの推定利回りなどをまとめています。市場動向を把握する材料としてご活用いただければと思います。

 売買事例分析と同じく四半期に1度実施している成約賃料調査も11月号に掲載しました。オフィス賃貸市況は引き続き軟調。東京の調査対象エリア22地区のうち8区で、成約賃料水準が低下しました。このほか横浜・川崎や大阪でも成約水準をヒアリングし、グラフにまとめています。本誌ウェブサイトでもデータを公開していますので、併せてご確認ください。

 売買レポートは、米モルガン・スタンレーが推定330億円で取得した横浜の大型ビルや、英グロブナーが大型マンションの区分100戸を取得した事例、FPGが200億円超で取得した5物件など、記事22本を収録。これらを含む取引事例114件を一覧表にまとめています。なお、2002年の創刊以来の取引データは「ディールサーチ」で提供しています。REITの運用実績データなども収録していますので、トラックレコードをお探しの際はぜひ利用をご検討ください。

編集長 三上 一大