左手にルーペ、右手に赤鉛筆を持って日本経済新聞を開くのが、日曜朝の楽しみだ。といっても『愛の流刑地』の話じゃない。目的は不動産分野の求人広告。求人は市場のバロメーターなので、この3年間、チェックを続けている。

 はじめのころ、求人欄に見入る私の姿を見て妻は「また転職するつもり?」と聞いてきた。「40すぎて迎えてくれる会社など、あるわけない」と、そのときは答えたのだが、最近の不動産分野は当時とは様子が違う。「仕事のできる人なら40代でも50代でもかまわない」という話を聞くようになった。カネ(投資家の資金)はあるけどモノ(投資対象不動産)がない、仕事はあるけど人がいない状況なのだ。

 人材紹介会社の話からも、不動産分野の勢いの強さが伝わってくる。「求人はこの1年で倍増している」(リクルートエイブリック)。「現場の感覚として、顕在化している転職希望者に対する求人の倍率は1対10ほどの高さだ」(インテリジェンス)。ちなみに先日5/29付の日経新聞には13社が不動産分野の求人広告を載せており、チェックするのに疲れた。

 市場の拡大に即戦力の供給が追いつかない。その結果、即戦力は奪い合いになり、給与水準が高くなるという図式だ。銀行、証券、建設など、周辺分野からの人材流入も進んでいる。ある人は「建設分野からの転職者の多くは、やりがいの面でも収入の面でもハッピーになれる」と言っていた。それがホントかどうかは別としても、拡大する市場で求められて働く喜びは、いまの不動産ビジネスの世界なら感じられるだろう。個人の能力が結果に直結するので厳しいが、やりがいのある仕事であることも確かだ。

 日経不動産マーケット情報では、人材不足の現状や求められる人材像についての連載をウェブサイト上で開始した。題して『拡大する市場、不足する人材』。不動産投資ビジネスに関心のある方は、ぜひお立ち寄りください。

(菅 健彦)

■連載コラム 不動産投資ビジネス最前線/拡大する市場、不足する人材

【第1回】求人が前年比で倍増、実力あれば50歳での転職も
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/NFM/column/column_jinzai050531.shtml

【第2回】台頭するカタカナ職種
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/NFM/column/column_jinzai050603.shtml