特集記事の取材で地方都市を訪れた。地方都市の出張は、新鮮な素材をふんだんに使った、おいしいものを食べられるのが魅力の一つだ。より確実な店選びのために、私は地元の人に「オススメの店ってありませんか」と聞くことにしている。ガイドブックにも載っていない隠れた名店を教えてもらえることがあるからだ。

 今回の地方都市の取材で、あるファンドが高い利回りを期待してオフィスビルを取得したものの、目算が狂ってしまったという話を聞いた。取得したビルは、周辺のビルに比べて、スペックなどが飛び抜けて良いわけではないものの、テナントの契約賃料水準が相場よりもはるかに高かったそうだ。しかし、ビルを取得した後、すぐにテナントが転出してしまった。

 実は、賃料が高かったのはあくまで見かけだけのことだったらしい。オーナーとテナントが示し合わせて、賃料水準をわざと高く設定し、利回りの高いビルにみせかけて売却したという。この話を教えてくれた取材先は、「テナント企業が、オーナーからキックバックを受け取っていたのかもしれない」とみていた。

 この話の真偽のほどはわからない。しかし、ありえない話でもない。別の取材先は、「地元の不動産関係者なら、不自然な賃料水準を聞いて警戒したに違いない」と話していた。現地の情報、事情を十分に把握しなければ、おいしい話が本物なのか、それとも見かけだけなのかを判断することはできないのだ。

 先日、取材した東京のファンド運用会社の社長は、自ら地方都市を回って、地元でネットワークを築き、情報をかき集めていた。地方で優良物件を探すには、現地の関係者とのネットワークを作り上げることに尽きる。深い関係を築き上げれば、他の会社が知らない隠れた優良物件を教えてもらえることもあるはずだ。

(田村 嘉麿)