ある投資会社の人に聞いた話なのだが、住宅投資に乗り出そうとある賃貸マンションを見に行ったところ、住人が豚を連れて出てきてびっくりしたそうだ。「犬猫ならわかるけれども、豚だからねえ。食べるわけにもいかなないだろうし、大きく育ったらどうするつもりなんだろう」。マンションの入居者管理の大変さをひょんなことで感じたという。

 豚は特殊なケースだろうが、オーナーに内緒で犬や猫を飼っているマンション住人は少なくない。私の住むマンションでもペットは禁止されているのだが、つい先日、夜遅くに帰宅したところ、エントランスわきにある非常階段の扉が開いて大型犬が飛び出てきた。住人がこっそりと散歩に連れて行こうとしたところに出くわしたわけだが、以前、ひとけのない競売物件を見に行って、薄暗い階段でいかにもそちら系の恐い人と出くわした時ぐらい、驚かされた。

 不動産経済研究所の調査では、2004年に首都圏で販売されたマンションのうち、実に55%でペット飼育が認められているそうである。賃貸マンションでもペット対応可能をうたう物件が目立ち始めた。日本の世帯規模はどんどん縮小していて、5年ごとに実施されている国勢調査によると、日本の平均世帯人数は1980年の3.22人から2000年には2.67人にまで落ち込んだ。東京では2.21人にすぎない。子どものいない世帯や一人暮らし世帯の増加が原因なのだろうが、それに伴って寂しさを紛らわせるためにペットを飼う人が増えているのではないだろうか。

 かく言う我が家もドラ猫(妻)が外国に飛び出ていってしまい、目下、寂しい一人暮らしである。料理を作ってくれるかわいい子猫でも飼ってやろうかと思う今日このごろである。

(三上 一大)