「本格的な賃貸タイプの高級SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)マンション『リゾーム都立大』がこのほど竣工し、入居者の募集を開始しました」「専有床面積が101.70m2~122.38m2で、募集賃料は45万3000円(月額)~54万2000円(月額)」。2002年10月の大京のニュースリリースに、こんな文面がある。

 東急東横線の都立大学駅から徒歩7分、地上3階地下1階建て、総戸数8戸のマンションだ。リリースには次のような説明もあった。「生活利便性を兼ね備えた閑静な高級住宅地エリア」「リビングには3.3~3.7メートルの天井高をもつ吹き抜け」「マンションまでは、100M(メガ)ビット/秒の超高速光ファイバーケーブルを引き込みます」。新しいタイプのマンションを開発した意気込みが、伝わってくる。満室稼働を前提に計算すると、竣工時の募集賃料の合計は月額391万円、年間4692万円になる。

 昨年12月、このマンションが売却された。調べてみると、竣工当時とは賃料が変化している。大京レンタルのホームページでは、月額賃料が29万5000円~39万円になっている。満室稼働時には、賃料収入の合計は月額287万円、年間3450万円になる。竣工時に掲げた賃料の約7割の水準だ。これが現在の市場価格なのだろう。

 売却価格は公表されていないので、勝手に計算してみた。稼働率を9割、支出を賃料収入の2割、利回りを4.5%と仮定して価格を計算すると、次のようになる。

当初の募集賃料の場合:約7億5000万円
現在の賃料の場合:約5億5000万円

 その差はざっと2億円。都心では投資用不動産の取得競争が激化している。安定した利回りの物件が不足すると、土地を買って建物を建てる開発型の投資が活発になる。しかし開発型の物件には、トラックレコード(実績)が存在しないリスクがある。そのリスクが少しだけ実感できた。

(菅 健彦)