全国各地で相次いで地震が起きている。これほど頻繁に、しかも各地で発生している状況をみると、「我が事として備えよ」と宣告されているような気がしてならない。

 先日、地震の記憶も新しい福岡市を訪れる機会があり、窓ガラス被害が大きかった福岡ビルに立ち寄ってみた。外壁はすべて改修用のシートで覆われ、その上に「全館営業中」の文字が大きく貼り付けられていた。日経アーキテクチュア誌でも報道されている通り、先の地震で福岡ビルは全1608枚の窓ガラスのうち444枚が割れて落下した。普通ガラスの「はめ殺し」であったため、地震時の変形を吸収できなかったのが原因とされている。

 手にした地元紙によると、驚いたことに、このビルは昨年6月に耐震診断を受け、耐震性に問題はないとされていたというのだ。それでも、今年度をめどに必要に応じて構造部分の改修を予定していたらしい。実際には耐震診断の対象外であった窓ガラスに被害が集中し、建物の基礎部分にはほとんど影響がなかった。国土交通省が、4月22日に公表した「既存建物における窓ガラスの地震対策について」という調査報告によると、全国で調査した3万2726棟の建物のうち、窓ガラスに関する告示基準に適合していない建築物が1582棟あった。

 一方、文部科学省の調査では、公立小中学校の校舎や体育館といった施設の約半数が、耐震基準を満たしていないことが明らかになっている(2004年度調査)。公立学校は、地域の避難場所として指定されることが多い。仮に耐震基準を満たしていない施設が指定されていれば、避難場所としての役割を果たしようがない。

 耐震診断をしても、対象からこぼれ落ちる項目がある。避難場所に指定された施設が、耐震基準を満たしていない可能性がある。いくら個々の耐震技術が優れていても、それが必要なところで適切に実行されなければ、肝心の効果は発揮されない。いかに「想定の範囲外」を小さくし、「想定の範囲内」を大きくするか。いま、それがリスクマネジメントに求められている。

(橋本 郁子=不動産アナリスト)