J-REITの投資法人が新たに物件を取得した時の発表文を見ると、情報の開示度に差があることがわかる。NOI(純収益)利回りを開示していないケースや、テナント構成や立地条件を詳しく解説していない場合もある。各投資法人のウェブサイトでも、開示する情報の内容に違いが見られる。個別のビルの稼働率や収支状況について開示しているところもあれば、ポートフォリオ全体の数字だけで済ませているところもある。

 ある機関投資家は投資先を選定する際に、J-REITの情報開示に対する姿勢を重要な判断材料としている。稼働率や収支状況、利回りについて、どこまで細かく開示しているかなどに着目している。安定的な配当を得ようとする投資家にとっては、情報が少ないことはリスクにつながる。J-REITの上場が相次ぎ、REIT間の競争も激しくなりつつある以上、これからますます情報開示に対する姿勢が問われていくことになる。

 ここからは個人的な見解だが、利回りや稼働率などのデータに加えて、所有するビルの概要をより細かく開示することも求められていくのではないだろうか。現在、J-REITは所有するビルの規模や立地などの基本的なデータは開示している。しかし、設備スペックや改修計画、警備方式、ビル内の利便施設などの細かいプロフィールを開示しているところはほとんどない。それぞれの投資法人が、そこまで必要ないと考えているのだろう。

 ただ、取り扱っている商品のプロフィールを細かく開示する方が、より信頼されやすくなる。たとえば、スーパーマーケットで野菜や果物の生産地や生産者の名前を示しているケースがある。同じような商品が並んでいれば、私なら情報が多い方を選ぶ。その方が安心できるからだ。オフィスビルなどの建物でも同じだろう。ビルの設備や管理状況まで細かく開示している方が、投資家の信頼を得られやすいのではないか。投資しているビルが高いスペックを持っているとわかれば、投資家も安心できる。投資法人も、所有するビルが高い競争力を持ち、テナントからの評価が高いことをアピールしたいはずだ。それには、設備スペックや改修計画や警備方式といった管理状況など、個別のビルのデータを開示することが、なによりも効果的なのではないだろうか。

(徳永 太郎)