2005年2月、目黒区自由が丘で「カランタ1966」が竣工した。第一生命保険が築39年の自由が丘支社ビルを、店舗と賃貸住宅からなる複合ビルに転用した。カランタ1966は、シンプルなキッチンなどSOHOを意識したデザイン性の高い住宅になっている。ビルの上層階にはアルミのルーバーを設置。1階のドーナッツ・カフェの前面には約40mのウッドデッキを敷いた。プロジェクトの開発プロデュースと設計は、竹中工務店が担当した。竹中工務店が手がけたコンバージョン(用途転用)プロジェクトは、日本土地建物の「ラティス青山」(港区南青山、2004年)、平和不動産の「アンテニア御茶ノ水」(千代田区猿楽町、2004年)に続いて3件目だ。

 カランタ1966は2004年11月から入居者の募集を開始し、2005年2月上旬時点で6割程度の稼働率だ。ラティス青山とアンテニアお茶ノ水は、満室で稼働している。これらはいずれも、周辺の賃料相場より1坪当たりの賃料を高く設定している。賃料の高さや元の建物の築年数にもかかわらず、コンバージョン物件は人気が高い。

 ラティス青山のデザインコンサルタントを担当した、ブルースタジオの大島芳彦取締役は「個性に賃料を払うマーケットがある」と語る。それは、同社のウェブサイトに登録している会員のアンケート結果によく表れている。一般的に、賃貸住宅を選ぶポイントで優先順位が高いのは、家賃や広さ、日当たりなどだ。だが、ブルースタジオのアンケートの回答では、「個性」が圧倒的な1位となっている。

 ブルースタジオの会員は、同社が手がける住宅への入居を希望する人たちだ。その7割は20代後半~30代前半で、男女の構成比はほぼ半々。単身者が約8割にのぼる。2000年の国勢調査によると、東京都の25~34歳の単身者は、約132万人になる。これらの層には、住宅の個性を重視する人たちが確実に存在する。コンバージョン物件の人気を支えている人たちだ。コンバージョンプロジェクトを成功に導くには、立地や建物の特性だけでなく、個性に賃料を払う20代後半~30代前半のニーズをつかむことが、大きなポイントになる。

(中林 利恵=フリーランス)

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