空室率について取材して、集計機関による空室率の算出方法の違いや、集計には出てこない“隠れた空室”があることなど、いろいろなことがわかった。だが、はっきりとした答えが見つからなかった疑問もある。「適正空室率5%の意味は?」というものだ。

 一般に、「適正空室率は5%」と言われている。ただ、この根拠については、考え方が分かれている。一つは、「空室率が5%になると、オフィス需給が均衡する」という考えだ。つまり、空室率が5%以上になるとテナントの力が強くなり、賃料値下げなどの条件交渉ができる。逆に5%未満だとオーナーが強気の貸し手市場になり、賃料は上昇する傾向にある。賃料の反転が起きる境界が5%だというのだ。

 一方で、「適正空室率5%とは、オーナーのビル経営の戦略から来ている」と説明する人もいた。入居するテナントの増床希望にこたえるためには、ある程度の空室を確保しておく必要がある。5%程度の空室がなければ、増床を希望する成長企業がビルから転出するリスクがある。オフィスビルを経営するにあたって、満室稼働は必ずしも戦略として正しくない、という見方だ。

 いずれにしろ、5%を下回るとオーナーの力が強い貸し手市場になると考えられているようだ。2004年9月時点で、生駒データサービスシステムが発表した都心5区の空室率は5.7%。空室率は低下傾向が続いている。この先、5%を下回ったら貸し手市場が鮮明になり、賃料の反転が見られるのか。まもなく、適正空室率5%の一つの答えが出そうだ。

(中林 利恵=フリーランス)