JR博多駅から普通列車で約15分のA駅。その駅前から徒歩5分の場所に築5年も経っていないマンションがある。ファミリータイプで広さ80m2台が中心。売り出し時の価格は2000万円台半ばだった。その一戸が今年、競売に出た。現地を訪れて外観を見ると、新築というのは大げさにしても古びた感じはまったくしない。エントランスや共用廊下はしっかり清掃されていてピカピカだ。

 競売の最低売却価額は約750万円。落札価格は約950万円だった。かなりお買い得な価格で落札できたように思えるが、実はこのマンションは問題物件だった。竣工直後から、水漏れ、ひび割れが相次ぎ、補修の連続。さらに床のスラブが5cm近くたわむ住戸が続出していたのである。

 管理組合の理事は「競売の資料にも、建物の問題点がある程度は書かれていたようだ。ただ落札者は、ここまでひどいとは思わずに手を出してしまったらしい。その後、実態のひどさに驚いていた」と話す。結局、落札者も加わって区分所有者全員で、この夏、売り主や建築会社を相手に訴訟を起こした。建て替え費用相当額など約11億円の支払いを求めている。

 話をする中で、建物がきれいな理由が推測できた。水漏れなどがあまりにも多かったために、共用廊下の防水や、壁の塗装を頻繁に補修していたので、築年数より新しく見えたのだ。

 最近、競売は過熱気味で、少しでも買い得感のある物件には驚くほどの入札者が群がる。しかし、中にはこの物件のように現況調査書や外観では問題が読み取ない物件があるので注意が必要だ。管理組合か住民にヒアリングすれば、問題が把握できた可能性は大きい。競売でババを引かないためには、手間を惜しまず綿密な調査をするしかないことを、改めて思い知った。

(高橋 敏雅)