不動産取引が活発化するなかで、商業施設の売買事例も増えている。例えばイトーヨーカ堂の綱島店(横浜市神奈川区)、新浦安店(千葉県浦安市)、錦町店(埼玉県蕨市)などを不動産投資信託(REIT)が取得している。流通業界を取材してきた経験からするとイトーヨーカ堂の店舗の営業力は、ほかのスーパーよりも平均的に高い。業績不振に陥り閉店するリスクが少ないことが、REITの取得が目立つ理由の一つだと思う。

 イトーヨーカ堂とかつては覇を競っていたダイエーは、再生プランがようやく固まりつつある。新聞報道によると丸紅とマルエツの協力で、不採算店を整理して食品スーパーに特化するようだ。果たして、このプランで再生は可能なのか。実は、食品スーパーに特化して、破綻の淵から業績を反転させた総合スーパーがある。山口県に本社を置く丸久だ。

 丸久は山口県内を中心に総合スーパーを展開していた。中途半端な品ぞろえの影響などで売り上げは伸びず、財務内容は悪化する一方だった。1998年、食品スーパーに特化する方針を打ち出し、新業態として大型食品スーパーを開発した。2005年4月時点で19店を出店している。2005年2月期の業績は前年比3.5%の増収、12.3%の増益と好調だ。「あの時点で食品スーパーに特化していなかったら、破綻していた」と、丸久の幹部は振り返る。

 再建が成功した大きな要因として幹部が挙げるのは、厳しい先生役の存在だ。オール日本スーパーマーケット協会(AJS)に加入し、食品スーパーとして日本屈指のノウハウを持つ関西スーパーマーケットに全面的に教えを請うたのだ。関西スーパーマーケットは丸久の店長候補を半年間も自社の店舗で研修させたという。

 ダイエーの場合、先生になるのは子会社だったマルエツだ。流通業に詳しいコンサルタントは、「ダイエーが食品スーパーの出店地域としている首都圏には、マルエツより高度なノウハウを持っているスーパーも多い。マルエツに協力してもらっても、競合を勝ち抜ける営業力を備えた食品スーパーを出店できるかどうかは疑問だ」と話す。ダイエーの店舗は、イトーヨーカ堂の店舗のように、REITなどが取得したがる競争力の強い店舗に生まれ変わることができるのだろうか。かなりの困難が予想される。

(高橋 敏雅)