ずいぶん前のことだが、大学時代の友人Sから突然、パーティーのお誘いを受けたことがある。聞けば、フルート吹きの女性と結婚することになったので、音大卒の美人を集めてパーティーを開くのだという。喜び勇んで出かけたのだが、心が美人の方たちだった。いや、心がきれいなのは実に喜ばしいことなのだが……。Sはパーティーの後すぐ、政治学の勉強のために、本場ドイツに飛び立っていった。幾ばくかの結婚祝いとせん別をSに渡すと、「ワインを送るよ」と喜んでいた。しかしソーセージ1本さえ送ってこない。薄情なヤツである。

 ドイツに飛んで行った薄情なヤツはSだけではない。「いわゆるハゲタカファンドも猟場を既に日本からドイツに移した」とあるファンドマネジャーは言う。ドイツは統一後の不動産バブルやITバブルが崩壊し、金融機関が不良債権を抱えた。これを狙ってのことだ。ドイツで利益を上げた後は、英国に飛んで行くという。「英国では2004年夏までに断続的に金利が引き上げられた。不動産利回りよりも金利が上回った(マイナスのイールド・ギャップになった)ビルがあり、こうしたビルを買いたたくのだろう」(同氏)。

 東京の収益用不動産の取引では、NOI利回りが4%を切る利回りで取引される例も表れ始めた。先だって入札された新宿のビルに至っては、某ファンドが2%そこそこの水準で取得したと関係者は明かす。いくら強気の金融機関でもノンリコースローンを出せるような価格ではない。結局、ファンドが全額、自己資金で購入した模様だ。東京での価格上昇の余波は地方にも及んでいる。例えば、大阪の心斎橋では、店舗ビルが4%の水準で取引された。バブルをほうふつとさせるような話である。

 不動産市場には、金利の動向が大きな影響を与える。金利が上昇すれば、不動産に要求される運用利回りが理論的には上昇する。それは価格の下落を意味する。不動産関係者の多くが、「短期的には金利は上がらない。上がったとしても賃料上昇で吸収できる範囲だ」と希望的観測を述べる。ファンドがビルを売却する3年後、その観測が当たっているか――。ハゲタカが舞い戻る事態にならないことを願いたい。

(三上 一大)