9月下旬の金曜日、金融庁発表の「金融庁の1年」を基に記事を書いていた。ごく単純な統計数字を報告する内容だ。淡々と書き終えるはずだったが、思いのほか長い道のりが待っていた。最後に確認のため電卓を叩いてみると、数字が合わないのだ。早速、金融庁に電話した。

 忙しい役所のことである。迷惑にならないようにと念を入れて、昨年発表された数字も確かめ、間違いの個所に見当をつけて電話した。すぐに原因はわかるだろうと思いきや、そう簡単ではなかった。国が発表する数字だけあって、複雑な積算があるのだ。あいにく担当者も不在。回答は翌週になるという。「他にわかる方はいないんですか?上司の方とか……」「私です。すみません」「急いでいるんですが、本当に誰も?」「担当者のパソコンの中にデータがあって、当人しか開けないので……」。幾人もの目でチェックする体制があるのかと思っていたが、そうでもないようだ。

 結局、解決したのは三連休を挟んだ週明けの火曜日、午後8時近くのことだった。朝一番で先方から、原因の確認に夕方までかかると、恐縮した様子で電話があった。夕方の5時に電話をすると「あと、30分」。そして、とうとう午後8時近くに判明した次第だ。思いがけない難題を持ち込んでしまったようだ。手数をかけたことは申し訳なく思いつつ、「見なかったことにしよう」というわけにもいかないので、仕方がない。

 しかし考えようによっては、簡単に気づく間違いで幸いだった。足すと合わないという明らかな不整合なら、遅かれ早かれ誰かが気づくだろう。一見して何もおかしいところがないのに、実は積算の過程に間違いがあって、出てきた数字は違っているという場合だったら気づきようがない。もし担当者も気づかなければ、公表=正しい数字として一人歩きするのだろう。

 ところでこの一件、金融庁のホームページ上のデータが訂正されるのは、もう1カ月ほどかかるとのことだ。今度こそ、訂正までに幾重もの鉄壁のチェックが必要なのだろうか。何かと不自由なことである。

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(山田 雅子=フリーランス)