留学中の妻に会いにニューヨークに行ってきた。冬のロンドンを「霧のロンドン」と呼ぶならば、夏のニューヨークは「霧雨のニューヨーク」と名付けたい。といっても天然の霧雨ではない。ニューヨークではエアコンを窓枠に設置した古いアパートメントが多く、その水滴が霧状になって降ってくるのだ。現地の人にとってはしごく当然のことらしく、だれも気にする気配がない。

 それどころか、本物の雨が降ってきても少々のことなら、傘を差さない人が多い。カンカン照りで日傘を差している女性なんて皆無だ。妻はというと、日傘常備で紫外線からのガードに万全の態勢だ。だから目立つこと、目立つこと。「おね~ちゃん、雨なんか降ってないよ!」とからかわれることもしばしばらしい。しかし、ニューヨーカーはしょせん、世界各国からの移民の集まりだ。他人の目を気にすることなく、自分らしさを押し出すのが当たり前。ある意味、妻もニューヨーカーっぽくなってきたといえるかもしれない。

 地元の不動産会社によると、ニューヨークでは家賃値上げに制限が加えられたレント・スタビライズド・アパートメントがあちらこちらにあるそうだ。公営ではなく、あくまでも民間のアパートメントなのだが、値上げ幅はニューヨーク市議会によって決められる。一般のアパートメントよりも安い賃料で住めるのが魅力で、市内100万世帯、200万人以上がレント・スタビライズ制度の恩恵に預かっている。

 最近は物価の上昇が続いており、地下鉄は1.5ドルから2ドルに、イエローキャブの初乗りは2ドルから2.5ドルに値上げされた。家賃も例外ではない。保険料やら燃料費やらの値上げにより、ここ2年でアパートメントの運営コストが平均24%上昇したため、市議会はレント・スタビライズド・アパートメントの値上げを決めた。当初、2年契約で最大7.5%の値上げ幅と決まったが、後に開かれた公聴会で市民が猛反対し、6.5%に引き下げさせた。小雨や日差しでは傘を差さないニューヨーカーも、オーナーの家賃値上げ攻撃から身を守るレント・スタビライズ制度の傘だけは手放せないようだ。

(三上 一大)