本誌のニュースでもたびたび取りあげられているが、ここのところ学校法人による土地、建物の購入が目立つ。東京理科大学が都市基盤整備公団の旧本社ビルを取得したほか、モード学園が朝日生命本社ビルを、日本大学がお茶の水スクエアを取得した。少子化時代に向けて、学生を確保するために積極的な施設開発を始めたとみえる。優秀な学生を集めるには、有利な立地と最新の設備から、というところか。

 国立大学は今年4月から法人化され、かなりの権限が学長に委譲されるようになった。それだけ「経営」の責任も重くなっている。東京以外の国立大学では、産学連携や情報収集の拠点(リエゾンオフィス)を都心に設置する動きが活発だ。ホテルに活動拠点を構える大学もあり、京都大学は帝国ホテルに、北海道大学は新高輪プリンスホテルにオフィスを構えた。

 最近では、魅力づくりの一環として、大学の敷地内に有名レストランを誘致する例も増えている。海外からの研究者にも胸を張れる施設とサービスを目指し、地域の住民にも広く利用を開放しているらしい。一般のビルなどと比較すると賃料が低いので、料理を低価格で提供できる点が強みとなっている。先日、2007年に大学進学希望者と定員がほぼ同数になるとの試算が発表された。生涯教育、社会人教育、専門性の高い大学院教育など、広く大学を開放し、交流を図っていくための動きはますます活発になりそうだ。

 ふと、こんなことを思い出した。かつて在籍した大学の図書館で、借りた本の返却が1日遅れた。遅れたことは何とも言い訳のしようもないが、おわびしながら本を差し出した瞬間に、司書から信じ難い罵声を浴びた。同様の経験をして、二度と図書館を利用しなくなる学生が多かったことを後で知った。学生確保のために、立地や設備を見直す大学は多いが、その施設をいかに運用するかも忘れてはならない。今ごろ、あの司書とあの図書館はどうなっているのだろうか。

(橋本 郁子=不動産アナリスト)