仕事でときどき西麻布3、4丁目方面行く。このエリアで働く人から「六本木ヒルズができてから不便になった」という話を聞いた。不便の原因となっているのは、六本木6丁目交差点にできた歩道橋のようなデッキである。六本木駅から徒歩で西麻布3,4丁目方面に行くとき、これまでは横断歩道を渡ればよかった。それが開発に伴って横断歩道が廃止され、デッキを上り下りしなければならなくなったのだ。デッキのアプローチ部分には、階段のほかにエスカレーターとエレベーターが付いている。

 「この付近の人たちは皆、怒ってますよ。なんで私たちがわざわざ上り下りしなければならないの。自転車の人はもっと困ってます。これまではすっと通れたのに、いちいちエレベーターを使って渡らなければならないのだから」。西麻布3丁目の事務所に勤務して十数年になるという女性は、このようにまくしたてた。

 西麻布4丁目の会社に勤務する知人は次のように話す。「あれができてから歩く時間が長くなった。1~2分違う。会社にはぎりぎりに着くようにしていたので遅刻してしまう。だから、1本早い電車に乗るようになった」。ときどきの訪問者ならわずかな時間だが、毎日の話となると切実だ。

 立体化について行政は「歩行者の安全を考えてのことで、理解していただくしかない」と説明する。残念ながら、以前のような横断歩道に戻す計画はない。にぎわいの陰で、地元の人たちの不満がくすぶっている。

(菅 健彦)