日本での不良債権投資で得た所得をめぐり「モルガン・スタンレーのファンドが東京国税局の税務調査を受け、2000年までの2年間で約180億円の申告漏れを指摘された」と5月29日付けの新聞各紙で一斉に報道された。

 国税庁は「個別の事例について公表するようなことはしない」と言って取材に応じようとしないが、新聞各紙で報道されたところをみると、誰かが情報を各紙にリークしたことは間違いない。おそらく、同様の仕組みで投資を行っている会社やファンドへの警告の意味合いで情報を漏らしたのだろう。

 投資運用会社をはじめとする外国法人が匿名組合出資などを通じて得た利益については、原則として法人税を課される。しかしその外国法人の本国と日本との間に租税条約が結ばれていて、課税しない条項が設けられていることがある。例えばオランダなんかがその例だ。モルガン・スタンレーが運用するファンドは米国に拠点があるが、複数のオランダ法人を通じて日本の不良債権に投資することで、課税を回避していたようだ。国税局はこのオランダ法人に実態がなく、米国ファンドが投資をしているとの判断で課税に踏み切ったらしい。

 電気回路は回路が長いほどロスが大きくなるが、こと税金に関しては様々な国を迂回させるほどロス(税金)が減ることもあるのだという。投資運用会社にとっては税コストを極力抑えることが株主や投資家への義務であり、あの手この手で課税を回避しようとする。どの国もこうした国際的な課税逃れにどう対処すべきか頭を痛めている。

 こうした中、OECD(経済協力開発機構)は世界に点在するタックス・ヘイヴン(租税回避地)に対して各国の税制度とのバランスを欠く「有害税制」の見直しを迫っている。不動産投資でポピュラーなケイマン諸島も2005年までに「透明性」と「実効的情報交換」を実現することをOECDに約束させられた。今後、ケイマンを使った投資スキームにどんな影響が出るか注目される。

 日本ではこの4月から法人税法の一部が改正された。これまで、日本に拠点を置いていない外国法人が匿名組合出資の配当を受け取る場合、匿名組合員が10人未満だとその外国法人には源泉徴収をせずに、年度末の申告納付を求めてきた。しかし実際には取りっぱぐれることが多いことから、日本に拠点を置かない外国法人への匿名組合配当については、組合員の多寡に関係なく、原則20%の源泉徴収を課すことにしたもの。課税の実効性を上げる狙いだ。

 税コストを極小化したい投資家と、課税逃れを一網打尽にしたい各国との頭脳戦に終わりはなさそうだ。