「今は不動産バブルなの?」――。不動産投資の雑誌で仕事をしていると自己紹介した後に、十中八、九の割合で帰ってくるのがこの質問だ。普段は不動産に縁遠い人にも興味がある話題のようで、筆者は会社のエレベーターや行きつけの店のカウンター場所といった場所で何度となく尋ねられた。しかし、この問いに正面から答えるのは実に難しい。

 1年前なら、「不動産価格は上がっているが、バブルの再来とは違う」と自信を持って答えただろう。「収益還元法に基づく価格決定が主流となってからは、過去のような地価暴騰は起きない」と聞いていたし、実際、3%を切るような低いNOI(純利益)利回りの取引はまれだった。2006年1月時点では、金融政策担当者の多くも「不健全な軌道に踏み込むリスクは小さい」(日本銀行の福井俊彦総裁)といった見方を崩していなかった。

 しかし昨年後半からは、丸の内の大型ビルが本誌推定利回り2%台で取引されるなど、市場の過熱を印象づける出来事が相次いだ。大手不動産会社やファンド運用会社のトップはいまも「バブルではない」と口をそろえるが、現場担当者のなかには違う意見を持っている人もいる。

 ある国内のファンド運用会社で働く物件取得担当者は、「きまじめに収益還元法で入札価格を決めていたら、一等地では何も買えない。とりあえずの採算は無視し、周辺の売買事例を見て値付けしている」と明かしてくれた。例えば、過去2年で地価が3倍に跳ね上がったといわれる、大阪の御堂筋界隈でこの傾向が強いそうだ。これでは“いつか来た道”の再現ではないか・・・。少なくとも、価格決定プロセスにおいてはバブルの兆候があると言わざるを得ない。

 高い値付けを説明する際、その理由を賃料相場の上昇に求めることが多い。だが、その先行きについては市場関係者の間で意見が割れており、2009年には景気の腰折れで賃料が下落に転じると懸念する声も根強い(本誌2007年2月号「トピックス」参照)。「将来の予見が難しい時ほどリスクを取って投資する意味がある」という意見もあろうが、上げ潮の相場も後半戦になれば、必ず博打の様相を呈してくるのは歴史が教えるところだ。

 おりしも昨年暮れ、金融庁は不動産ファンド向け融資への監視強化にかじを切った。背景には、積極的にバブルの芽を摘んでいく方針があるのだろう。国土交通省を中心に、市場の監視役としての役割を期待して、不動産鑑定評価の質向上を図る動きもある。人間の期待が市場を動かしている限り“絶対”の2文字はないが、これらの取り組みがどこまで奏功するか注視していきたい。

本間 純