先日、企業の開示資料をみていたところ、米Prospect Asset Management(以下、Prospect社) がクレッシェンド投資法人の発行済み投資口の約28%を取得したとの大量保有報告書を見つけた。Prospect社といえば、プロスペクト・レジデンシャル投資法人を立ち上げたプロスペクト(本社:千代田区)の関連会社である。すわREITのM&Aに向けた準備かと色めき立ったが、1月24日付の日経金融新聞でその真相が明らかになった。

 それによると、Prospect社はREIT専門に投資するファンド・オブ・ファンズを立ち上げており、取得した投資口はこのファンドに組み入れたという。ほかにもFCレジデンシャル投資法人の投資口の約32%、プロスペクト・レジデンシャル投資法人と東京グロースリート投資法人の約20%、アドバンス・レジデンス投資法人の約14%、MIDリート投資法人の約8%などを取得している。今後は投資口価格の上昇に向けた対策を各REITに迫っていくという。

 同社の戦略から、REITに対する投資家の取捨選別がシビアになっている現実が透けてみえてくる。いまや上場REITの数は40を数え、2月14日には41番目となる野村不動産レジデンシャル投資法人が上場する予定だ。REIT市場は、投資家が目的に合わせて銘柄を自由に選ぶことができる規模に成長した。信用や実績、個性を投資家に的確にアピールできないREITは人気が低迷し、投資口価格が1口あたりの純資産価値を割り込む水準に落ち込んでいる。Prospect社が大量に取得したのはこうした割安な銘柄が中心だ。

 今後もREIT参入は続く。関東財務局によれば、アルファリート投資法人(スポンサー:アルファ・トラスト・リアルティ・アドバイザーズなど)、エコロジー・リート投資法人(明豊エンタープライズなど)、シンプレクス・リート投資法人(シンプレクス・インベストメント・アドバイザーズ)、デュープレクスセレクション投資法人(リテック・コンサルタンツ)、東京オフィスビルファンド投資法人(住友不動産)、日本商業施設ファンド投資法人(三井不動産)が、すでに投資法人としての登録を完了している。競争は激しくなり、厳しいREIT運用を余儀なくされることは間違いない。Prospect社の動きは直接的にM&Aをしかけるものではないようだが、米国のようなREITのM&Aや非上場化の動きが具体化するきっかけになるかもしれない。

三上 一大