国土交通省が3月22日に発表した2007年1月1日時点の公示地価では、全用途の全国平均地価が1991年以来、16年ぶりに上昇に転じた。地方都市ではまだ下落している地域もあり、投資マネーが流入している東京、大阪、名古屋の三大都市圏などの上昇率が全体の数値を押し上げた格好だ。

 不動産業界団体やアナリストのコメントには、“バブルの再来”を否定する内容が並んだ。土地の価格形成は収益性に裏付けられたものであり、投機的な要素はみられないといった主張だ。一方で、評価を担当した土地鑑定委員会の委員長が、「通常の利便性・収益性などでは、その合理性を必ずしも説明することができない価格形成がなされたのではないか」という取引の存在に言及するなど、過熱する市場をけん制する動きもあった。

 数年前から、将来の賃料上昇に期待しすぎているとしか思えない価格での取引が増えてきたと感じていた。特にオフィスビルの取引で、そう思うことが多かった。ただ、このところのオフィス賃料の上昇スピードはあまりにも速く、どこまで上昇するのか予測もつかないほどだ。2006年後半、JR東京駅周辺にある大規模ビルの1坪あたりの成約価格は半年間で1万円も上昇した。東京駅前の新築ビルでは、1坪あたり8万円の成約事例が出たとの情報もある。この金額が事実だとすれば、まさにバブル期並みの成約価格が出たことになる。

 賃料が上昇する過程でバブル期に匹敵する水準の成約価格が出ることを指摘する人もいたが、これほど早いとは予測できなかったのではないか。ただし、都内のオフィス賃料全体がバブル期の水準に達すると見る向きは少ない。企業の賃料負担能力には限界があり、個人的にはその限界値に近づきつつあるのではないかと思う。

 今後のビルの賃料上昇や収益性を考えるうえで、今年は二つの動きに着目している。一つは新築の大規模ビルに企業が移転することによって、既存ビルに生じる空室の成約価格だ。オフィス不足の影響で企業の移転が少なくなるなか、1フロアに満たない区画での成約価格が、エリアの標準的な成約水準として捉えられがちになっている。2007年~2008年に完成する大規模オフィスビルに移転を予定している企業が、入居ビルを解約する動きはこれから本格化する。既存ビルでまとまった面積の成約事例が相次ぐことで、ビルの収益性の見方に修正を迫られるエリアも出てくるのではないか。

 もう一つは、入居テナントとの賃料改定の動向だ。入居テナントの契約賃料(継続賃料)はそう簡単に値上げできるものではない。実際に、テナントとの間で値上げ交渉が難航しているビルもある。高値で取引されたビルで、想定している運用利回りを実現できているのかを確認していく必要があるだろう。理論的には継続賃料はエリアの相場価格(市場賃料)に収れんしていくのだろうが、それにはかなりの時間を要するはずだ。

徳永 太郎