日経不動産マーケット情報の調査によると、東京23区内で2007年以降に完成する延べ床面積1万m2以上の大規模オフィスビルは109棟、総延べ床面積は568万m2に達する。この面積は、今年4月に完成した新丸の内ビルディングの29棟分だ。

 これだけのビルが完成しても、ひっ迫するオフィス需給を解消するまでには至らないというのが大方の見方だ。2007年には168万m2が完成するものの、2008年、2009年は延べ床面積で半減する。完成するビルのなかには既存ビルの建て替えも多く、オフィスストックの大幅な増加にはつながらない。企業のオフィス拡張需要を満たすには、まだまだビルが足りないというわけだ。

 森ビルは、5月14日に発表した「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査」のなかで、今後の空室率予測をまとめている。これによると、2008年の空室率は1.9%、2009年は1.4%にまで下落するとみている。空室率1%台とは、どこを見渡しても空室が見当たらない状態を指す。今後ますます、オフィスを拡張しようとする企業の間で、スペースの分捕り合戦が激しくなるのは間違いない。

 こうなってしまうと、もはやオフィスを集約することは困難になる。大規模オフィスが相次いで完成した数年前は、オフィスを集約して効率的なレイアウトを実現できた。しかし、スペースが空いているビルが極端に少なくなる以上、好むと好まざるとにかかわらずオフィスを分散せざるを得ない。いっそ、効率的なオフィス分散のあり方を真剣に考えたほうが良さそうだ。

 日経BP社がかつて発行していた「日経オフィス」は、1990年6月の特別編集版で「積極分散が会社を伸ばす」という特集を掲載した。1990年といえば、東京ビルヂング協会がまとめているデータによると、オフィス空室率が1%未満の水準にあった。オフィス分散の最大の問題点は、社内のコミュニケーション不足だ。製品開発力や生産性が低下することを、どの企業も危ぐしている。日経オフィスの特集では、各ビルに各事業部の担当副社長を常駐させる、各ビルを巡回する定期バスを運行するといった、分散のデメリットを解消するための工夫を紹介している。

 特集ではさらに、企業トップが決断するオフィス戦略について、四つの選択肢をまとめている。1)機能的再配置(本社近くで分散)、2)一部郊外立地、3)全社郊外移転、4)都心1棟集約――だ。4)は、土地を所有している企業や、まとまったスペースを確保できた企業しか選択できない。結局は、1)~3)から選択したうえで、各企業の現状にあった分散方法を検討することになる。ここで注目されるのは、JR横浜駅周辺がオフィスビルの開発ラッシュを迎えていること。大手不動産会社の試算では、2010年までに横浜市で約15万坪(約50万m2)のオフィスが完成する見込みだ。これからは、横浜市への分散・移転を視野に入れて、オフィス再配置を検討する企業が増えそうだ。

徳永 太郎