特集の取材で仙台に行ってきた。筆者は小さい頃に仙台に住んでいて、三越百貨店の向かいにあるそば屋が大好きだった記憶がある。久しぶりにそのそば屋に入り、大盛りそばを注文した。満腹で店を出たところ、店の近辺の飲み屋の壁に建築のお知らせ看板を見つけた。

 看板によると、1600m2の土地に地上8階地下1階建て、延べ床面積1万m2の飲食と物販の店舗ビルを建設する。取材先に聞いてみたところ、戦後すぐにできた飲み屋横町をつぶして建てるのだそうだ。

 滞在したホテルの近くにも、戦後間もないころにできたとされる“中央市場”という小さい店舗が集まった横町がある。隣は巨大な時間貸し駐車場で、ここにはマンションが建つのだが、マンションの建築主は中央市場に対し共同開発を提案しているという。

 新しい建物は、どんなものになるのだろうか? 人が集まる街なのだから、古い部分が次々と新しくなっていくのは当たり前だ。その上で、古い建物や街並みの雰囲気を残せれば、より味のある街になるのではないか?

 三菱地所が手がけた「南町通センタービル」はそんな考えに基づいた開発だ。今年の3月に竣工した同ビルは、以前この場所に立っていた農林中央金庫仙台支店のイメージを継承している。旧建物は戦災を免れた数少ない建物として仙台市民に愛されていたという。

 これから、仙台には新しいオフィスビルが20棟近く供給される。それぞれに歴史を感じさせたり、工夫を凝らしたりしたビルであって欲しい。個人的な話で申し訳ないが、特集のために街中を20時間以上も歩き続ける身としては、趣のあるビルがあるだけで、仕事が随分と楽しくなるからだ。

田村 嘉麿