「社員が増えてオフィスが手狭になってきたが、いい移転先が見つからない」。伸び盛りの企業を取材していて、立て続けにこんな言葉を聞いた。もちろん、どんなビルでもいいというわけではない。投資家や取引先との打ち合わせも多いことから、都心にあるハイグレードのオフィスビルを探している。「スペックやステータスの面からみると、どうしても築浅の大型ビルになる。1フロアをまるまる借りるのは大きすぎるので、4分の1フロアとかでいいのだが、最近は小割りで借りようとすると嫌がられるのが現状だ」とこぼす。

 しかし、こうした企業の受け皿になるビルが今後、増えてくるかもしれない。野村不動産は6月、プレミアム・ミッドサイズ・オフィスビル開発事業を立ち上げた。これまでの中小規模のビルにはなかった高いデザイン性や機能性、セキュリティーを実現した高付加価値のオフィスビルを開発するプロジェクトだ。第1弾となる延べ床面積3500m2のオフィスビルを日本橋で開発中だ。

 都心で高級賃貸マンションの開発を手がけてきたコムラエージェンシーも、そのノウハウを生かした中小規模オフィスビル開発事業をスタートさせている。5月に九段南で延べ床面積1400m2のビル開発に着手した。一般的なビルよりも2割増しの建築コストをかけて、シンプルなデザインながらも、品質の高い造りにする。外資系企業やベンチャー企業の入居を見込んでいるという。

 中小規模のビルの開発でもグレードの高さを追求する動きが広がっている背景には、都心での開発用地の取得競争激化と仕入れ価格高騰がある。例えば、港区内で進行中のある開発用地の入札には、50社を超える企業が参加の意思を表明しているという。土地価格の上昇は開発コストの増大を招く。そうなれば、賃料を高く設定できる商品企画が必然的に求められるというわけだ。テナントの需要も見えてきたことから、今後、中小規模のビルにも品質引き上げの波がじわりと広がりそうだ。

三上 一大