休暇中にロンドンを訪ねた。今回は3回目の訪問だ。ロンドンに対して「どんよりして活気のない街」という印象を持っていた私は、街の活気に驚いた。ヨーロッパの他の国々をはじめ、アメリカや韓国などからの観光客であふれかえっており、ピカデリーサーカスではあまりの人の多さにバスを降りるのをためらった。どこの店の店員も表面的であるにせよ機嫌がよく、イギリス人が今までになく、とても美しく見えた。

 変化は街並みからも見てとれた。金融街のシティ地区では、まるで2軒に1軒が工事中かと思えるほど、多くのビルに建築・改修のための足場が組まれていた。今回の旅の目的は、有名建築家の下で働く友人の仕事を見せてもらうことだった。彼女によると、転勤してきた2年前と比べると仕事が増え、事務所の社員も倍増したという。7月10日には、かねてからシティで計画されていた同建築家設計の高層ビルの建設にゴーサインが出た。建設地はフェンチャーチ通りにあり、建物は45階建て、総工費3億ポンドの規模だ。コンペに通った後も、歴史的建造物の保護につとめているイングリッシュヘリテージの建設許可がおりず滞っていた計画だ。計画は王立英国建築協会の元会長から酷評されているが、今後の高層ビル建設への道が開けたという見方もある。

 本誌のニュースでも話題になったイギリスの建築家、ノーマン・フォスターが設計した新しい建造物もシティでたくさん目に付いた。なかでも2004年竣工の円柱形で先のとがった41階建てのスイス銀行ビルは独特の風貌だ。7月16日付のフィナンシャル・タイムズ紙によると、このビルの募集賃料は1スクエアフィートあたり年69.50ポンドだという。8月3日時点で1ポンドは246.92円。日本風に言えば、1坪あたり月約5万865円になる。

 グレードAオフィスの典型的な募集賃料は、シティ地区で1スクエアフィートあたり61.50ポンド(1坪あたり月約4万5063円)だというから、人気の高さがうかがえる。古くからロンドンの中心地であるウエストエンド地区は、これよりはるかに高額で107.50ポンド(1坪あたり月約7万8767円)。両地区とも前年と比べて25%以上上昇している(いずれもフィナンシャル・タイムズ紙による)。

 物価が高いと評判のロンドンだが、ロンドンっ子の感覚では1ポンドの価値はおよそ100円に相当するらしい。これを基準に考えればシティは丸の内に比べてリーズナブルだということだろうか。私もしばらくロンドンに住んでみたいと思ったが、友人の1DKのアパートの家賃が22万円だと聞いてためらった。1ポンドが本当に100円で換金できればいいのだが……。

London

テムズ川の対岸からは数え切れないほどのクレーンが立っているのが見えた

梅木 佐和子