8月中旬に、野田聖子衆院議員の事務所が入る岐阜市のビルが建設以来、不動産登記されていなかったことが報道された。あるメディアでは、「登記は所有者の権利で、義務だと思ってはいなかった」というビル管理会社の当事者のコメントが載っていた。

 不動産登記法では、建物の所在や種類、構造などを示す「表題部」の登記が所有者に義務づけられている。しかし、所有権や抵当権などの「権利部」の登記は、権利であって義務ではない。報道記事だけでは詳細は分からないのだが、所有者は表題部と権利部の違いを混同していたのだろう。

 問題になったビルは1990年完成と比較的新しいが、古くから立つ中小ビルでは、登記されていないものもある。日経不動産マーケット情報の記者がこれまでの取材で調べた範囲では、日本橋エリアの密集したビル街で、表題登記もない“幽霊ビル”数棟に出くわしたことがある。

 一方、権利部の登記をしていない建物は珍しくない。建て替えを前提として売買されたビルは、土地だけ登記を移し、建物の登記は前所有者のままになっているケースがよくある。生命保険会社のビルなども、かつては権利部が未登記のものが多かったようだ。数年前にある会社が資産を大量に処分する際に、まとめて登記してから売却する動きがあったと聞く。

 不動産売買の取材をする記者としては、登記の不完全なビルや所有権の移転が済んでいない売買の記事は非常に書きにくい。加えて、最近では特別目的会社(SPC)による売買が増えて、登記を調べても本来の所有者がわからないことが多いのも悩みの種だ。登記は権利である同時に、不動産の状況を正確に公示する意味合いも持つ。ビルの所有者はぜひ、SPCの名称に自社名や運用会社名を入れるなどして、売買の実態をわかりやすくしてほしい。

岡 泰子