3年ぶりにニューヨークに行ってきた。秋のニューヨークはコンベンションの季節。人が集まるこの時期はホテルの宿泊料が軒並み高騰し、シングルでも3万~4万円は当たり前となる。リーズナブルな値段で部屋を確保するのは一苦労だ。原因はホテルの客室数が少ないことにある。

 地元紙の報道によると、ニューヨークのホテル客室数は合計6万6000室で、都市ごとの客室数ランキングで7位にとどまる。年間平均稼働率は85%を超え、平均客室単価は330ドルに上る。こうした現状を背景に、ホテルの建設が増えているという。しかし現在の年間4000万人の訪問者を、2015年までに5000万人に増やそうというブルームバーグ市長の施策の前では、ホテル不足は解消されそうにない。

 ところで、ニューヨーク滞在中、米連邦準備制度理事会(FRB)が短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.5%引き下げて4.75%としたという大きなトピックがあった。低所得者や個人投資家向けの高金利住宅ローンが焦げ付く、いわゆるサブプライムローン問題が実体経済に与える影響を軽減するためだ。新聞各紙はこれを大きく取り上げていたが、問題がすぐに解決するとみるメディアはなかったと思う。変動金利のサブプライムローンでは、来年にかけて新たに200万人の債務者が金利大幅引き上げに直面するからだ。

 住宅市場の冷え込みは深刻で、「歴史的な災害」と表現している雑誌もある。8月の米住宅着工件数は季節変動調整後の年換算で133万1000戸。市場予想の135万戸を下回り、1995年以来12年ぶりの低水準になった。住宅ローンの貸し出しも低調だという。極め付きは競売の候補となった物件の数で、8月は全米で24万件強が対象になり、前年同月の11万件強から2倍以上にも膨れ上がった。

 そんななか、米国の通販番組で繰り返し宣伝されているのが、競売不動産で儲けるための教材だ。「たった数百ドルの投資で数万ドルを儲けた」というようなサクセスストーリーが何度も語られ、教材を使えば誰でも簡単にキャッシュが得られるとの宣伝文句が踊る。日本人的な感覚からはやりすぎな気がするが、ほかの不動産投資教材の通販番組でも似たような煽り方をしているので、これがアメリカ人のメンタリティには合うのだろう。いずれにせよ、住宅市場が下落局面にある時にも、こうした通販番組が成立するところに、米国の個人投資家層の厚みを感じる。

 さて肝心のサブプライムローン問題だが、住宅市場が底を打つのは早くても2008年末、回復するのは2010年以降になるとみられている。日本での不動産投資の先行きを占う上でも、この問題がどれくらいアメリカの実体経済に影響を与え、日本経済に波及するかを見極めていく必要がありそうだ。

三上 一大