2008年3月は、銀行が本店ビルを売却するニュースが続いた。りそな銀行が本店を構える「りそな・マルハビル」(千代田区大手町)と、新生銀行本店ビル(千代田区内幸町)だ。2行とも、将来的にオフィスを移転する方針を表明している。

 このニュースで思い出したのが、先日お会いしたある書店の店員さんの言葉だ。東京駅周辺にあるこの書店は金融関係の本の品ぞろえが豊富だが、「最近は周辺に銀行などの店舗やオフィスが減って、以前より金融関係の本が売れなくなった」と言っていた。

 明確なデータがあるわけではないが、確かに、丸の内・大手町エリアや東京駅周辺では、銀行系のオフィスが少なくなったように感じる。都銀の統合によって店舗やオフィスが集約されたことや、ビルの低層階にブランド店をはじめとする商業施設が増えたことなどが影響しているのだろう。これから転入を予定している銀行もあるが、全体としては、転出する銀行の方が目立つようだ。転出する銀行としては、冒頭のりそな銀行のほか、新銀行東京の本店が大手センタービルから新宿エリアに移転することが決まっている。

 丸の内・大手町エリアに詳しい不動産会社やオフィス仲介会社によると、ここ数年で目立って増えたテナントは、弁護士や公認会計士を数百人単位で抱える法律事務所や会計事務所などだ。高い賃料負担に耐えられる、1人あたりの生産性が高い業種が増えているという。

 オフィス賃料が日本一高い同エリアのテナント動向は、日本経済全体の動向を映しているとも言える。サブプライムローン問題などの影響を受け、今年から来年にかけて完成する大型ビルのテナント決定状況は、今のところ芳しくないようだ。逆風下でどんな企業が入居を決めるのか、引き続き追っていきたい。

岡 泰子