ニッセイ基礎研究所の松村徹上席主任研究員は、投資家の視点からAクラス賃貸オフィスの基準を作り、大手町ファーストスクエアや東京サンケイビルなど、東京都心5区に立地する40棟を選定した。

 これまで、Aクラスビルの基準はあいまいだった。一部のオフィス仲介会社が基準を公開しているものの、ビル名称までは明らかにしていない。松村氏は、新たな基準として、延べ床面積3万m2以上、最寄り駅から徒歩5分以内、天井高2600mm以上、OAフロア100mm以上といった複数の条件を掲げた。賃料水準の高さも条件のひとつとした。原則として、こうした基準をすべて満たす賃貸オフィスビルをAクラスと判定した。

 松村氏の試算によると、Aクラスビル40棟は東京23区の賃貸ビルストックのわずか0.2%にすぎないが、貸室面積ベースでは10%に相当する。40棟のうちの29棟は、2000年以降に竣工した新しいビルだ。松村氏は、Aクラスビルがマーケットで最高水準の賃料を獲得できる理由として、オフィスビルとしての実用性や利便性を超えた「ブランド価値」が存在していることも指摘した。

<Aクラスビルの新基準>
(1)都心5区の主要なオフィス集積地に立地
(2)1990年以降に竣工
(3)延べ床面積3万m2以上、基準階貸室面積300坪以上、20階建て以上
(4)最寄り駅から徒歩5分以内
(5)高水準の設備スペック(天井高2600mm以上、OAフロア100mm以上、コンセント電源電気容量40VA/m2以上、空調がフロア内で分割でき個別に制御可能、24時間入退室可能、床荷重300kg/m2以上)と耐震性能
(6)整形無柱で効率的なフロア形状
(7)ランドマーク性・視認性の高さ
(8)サブマーケットで最高水準の新規賃料が期待できる

(詳しい記事を9月20日発行の「日経不動産マーケット情報」10月号に掲載しています)

●松村氏が選定した東京都心5区のAクラス賃貸オフィスビル40棟
ビル名称 住所
大手町ファーストスクエア 千代田区 大手町1-5-1
東京サンケイビル 大手町1-7-2
アーバンネット大手町ビル 大手町2-2-2
パシフィックセンチュリープレイス丸の内 丸の内1-11-1
日本工業倶楽部会館・三菱信託銀行本店ビル 丸の内1-4-5
新丸の内センタービル 丸の内1-6-2
丸の内北口ビル 丸の内1-6-5
丸の内トラストタワーN館 丸の内1-8-1
丸の内ビル 丸の内2-4-1
山王パークタワー 永田町2-11-1
プルデンシャルタワー 永田町2-13-10
日本橋三井タワー 中央区 日本橋室町2-1-1
日本橋一丁目ビルディング 日本橋1-4-1
赤坂インターシティ 港区 赤坂1-11-4
赤坂溜池タワー 赤坂2-17-7
赤坂パークビル 赤坂5-2-20
愛宕グリーンヒルズMORIタワー 愛宕2-5-1
品川インターシティ(A・B・C棟) 港南2-15-1
品川イーストワンタワー 港南2-16-1
太陽生命品川ビル 港南2-16-2
JR品川イーストビル 港南2-18-1
JTビル 虎ノ門2-2-1
城山JTトラストタワー 虎ノ門4-3-1
オランダヒルズ森タワー 虎ノ門5-11-2
汐留シティセンター 東新橋1-5-2
汐留タワー 東新橋1-6-3
東京汐留ビルディング 東新橋1-9-1
汐留住友ビル 東新橋1-9-2
泉ガーデンタワー 六本木1-6-1
六本木ティーキューブ 六本木3-1-1
六本木ヒルズ森タワー 六本木6-10-1
新宿アイランドタワー 新宿区 西新宿6-5-1
住友不動産新宿オークタワー 西新宿6-8-1
渋谷インフォスタワー 渋谷区 桜丘町20-1
セルリアンタワー 桜丘町26-1
渋谷マークシティウエスト 道玄坂1-12-1
小田急サザンタワー 代々木2-2-1
恵比寿ガーデンプレイスタワー 恵比寿4-20-3
(注)自社利用フロアが過半を占める日本生命丸の内ビル、明治安田生命ビルは対象外とし、品川インターシティはA、B、C棟を3棟と数えた