ダヴィンチ・アドバイザーズは5月11日、テーオーシー(TOC)が商業施設建設のために検討しているエクイティ・ファイナンス(新株発行などによる資金調達)に異議を表明した。子会社を通じてTOC株の約10%を保有する立場から、株主価値の希薄化により「既存株主の利益を大きく損なう恐れがある」と主張し、協議の開催を求めている。
TOCはホテルニューオータニの創業家一族が経営する企業で、西五反田のTOCビル(東京卸売センター)などの不動産を保有、賃貸している。2009年9月の竣工をめざして、横浜・みなとみらい地区に延べ床面積約10万8000m2の複合商業施設を建設する予定だ。同社は5月7日の発表資料のなかで、総事業費400億円の調達を「自己資金、金融機関等からの借入、エクイティ・ファイナンス等により可及的速やかに検討」すると表明していた。
ダヴィンチは今回、TOC側がエクイティ・ファイナンスの実施を検討していることに対して、「貴社経営陣の皆様の保身による決定であるとして善管注意義務違反に問われるリスクが高まり、経営に支障が出る」と、強い調子で懸念を示した。さらに、TOCの不動産を担保に十分な資金の借り入れが可能だと述べたうえで、仮に将来エクイティ・ファイナンスが必要になった場合は、既存株主へ優先的に新株を割り当てるべきと主張。ダヴィンチ自身は1株1100円以上で引き受ける意向を示している。
なお、ダヴィンチは4月25日、TOC側が計画した株式公開買い付けによるMBO(経営陣による企業買収)を受けて、対抗買収を提案した。一方、TOC側は、ダヴィンチ傘下のREIT(不動産投資信託)運営会社、ダヴィンチ・セレクトが善管注意義務違反に問われたことを挙げ、この買収提案に不快感を示している。今回の発表と同じ5月11日には、ダヴィンチのコンプライアンス(法令順守)体制に関する説明が不十分だとして、26項目に及ぶ詳細な質問状を送付していた。