米ジョーンズ ラング ラサールの子会社で、不動産ファンド運営を手がけるラサール インベストメント マネージメント(LIM)の日本法人は11月19日、イーアセット投資法人の運用会社を買収する。REIT(不動産投資信託)運用会社の完全買収は日本で初めてだ。LIMは同時に、私募ファンドで運用していた大型商業施設2物件、576億円相当を投資法人に譲渡。イーアセットの運用資産総額を約1200億円と、一気に2倍近くに引き上げる。
イーアセット投資法人は、アセット・マネジャーズやイーバンク銀行など11社がスポンサーとなり、2005年9月に上場した総合型のREIT(不動産投資信託)だ。LIMは、11社が保有してきた運営会社、アセット・リアルティ・マネジャーズの株式をすべて取得。その社名をラサール インベストメント アドバイザーズに変更する。
また、LIMの私募ファンドは政府系投資機関、大手金融機関などと共同で、投資法人から228億円の第三者割当増資を引き受ける。LIMのファンドの出資額はこのうち158億円で、増資後の投資口の32.8%を保有する。投資法人はこの増資で、商業施設2物件の取得資金の一部を調達する。2008年1月の投資主総会を経て、REIT自体の名称変更も予定している。
REIT買収に踏み切る理由について、LIM日本法人の内山裕敬(ひろたか)社長は、「我々は海外の投資家を対象にファンド運用を手がけるなかで、国内の不動産にも投資してきた。しかし、グローバルに事業を展開する企業にしては、重要な市場である日本の投資家との関係構築は不十分だった」と8日の会見で話した。今後はREITを通じて国内に投資機会を提供する。イーアセット投資法人は総合型のREITであり、同社の投資戦略に合致していたため、今回の話を持ちかけたという。
買収には、軟調な相場に苦しむREIT側の事情も影響したようだ。東証REIT指数は、最高値を付けた5月31日から4割も下落した。三井不動産系の日本ビルファンドなど、ブランド力がある大型REITを除いて、公募増資による資金調達がままならず、成長に苦しんでいる状態だ。全銘柄のうち半数は純資産倍率(PBR)が1を切っており、投資口の時価総額より解散価値の方が高い。PBRが0.8まで落ちたイーアセット投資法人も例外ではない。
LIMは投資法人の資産規模を拡大して投資口の流動性を高め、国内の機関投資家を呼び込む考えとみられる。今回は、384億円のイオンモールむさし村山ミューと、192億円のイオンモール神戸北を投資法人に譲渡する。3年から5年後には投資法人を3000億円規模にする意向だ。ただし、現在保有している6棟、200億円相当の賃貸マンションについては、管理効率の低さや経年劣化を考慮して、将来売却する。オフィスビルと店舗を軸に運用資産を組み替えていく。
今後の海外投資については、「REITにとって避けることができない道だ。条件が整えば、上海、香港、シンガポールなどにある、LIMの運用物件を投資法人に組み入れることを検討する」(アジア太平洋担当のCEOを務めるジャック・チャンドラー氏)という考えだ。
LIMは世界で約406億ドル(4兆6000億円相当)の不動産を私募ファンドやREITで運用している。このうちアジア太平洋での運用資産は約46億ドル(5200億円相当)。日本では秋葉原センタープレイスビル、天王洲ファーストタワー、千歳アウトレットモール レラ、イオンモール浜松志都呂などの不動産を保有している。これまで郊外型ショッピングモールを主体に投資していたが、最近は都心部の不動産開発も積極展開している。