資金力に乏しい中小の不動産会社に強い逆風が吹いている。世界的な信用収縮に加えて、3K(建設費高騰、建築基準法改正、金融証券取引法施行)と呼ばれる悪条件が重なった。

 2008年3月にファンド運用会社のレイコフ(本社:大阪市)、5月には同業のグローバンス(本社:千代田区)が民事再生手続きを申請した。同じく5月、商業施設デベロッパーのミキシングが民事再生、ゼファー子会社でマンション分譲を手がける近藤産業が自己破産手続きに入った(いずれも大阪市)。小規模な戸建て住宅業者の倒産は枚挙にいとまがない。

 決して喜ばしい状況とは言えないが、見方を変えれば、経営体力に勝る大手が優良物件を安く手に入れるチャンスでもある。

 すでに、破たん企業の物件は管財人を通じて市場に出回りはじめた。法的な意味での破たんに至らずとも、資金調達難から開発をあきらめ、保有する土地のリストを持って売り歩くデベロッパーの話を筆者はいくつも耳にしている。これを機に物件取得を加速する方針を公言している大手ファンドも多い。多くの企業が中間決算を迎える9月までには、もう一山の動きがありそうだ。

 海の向こうからも、似たような話が聞こえてくる。米ニューヨークの不動産王であるマクロウ家は5月半ば、マンハッタンのフィフス・アベニューにあるジェネラル・モーターズ・ビルディングなど4棟を39億5000万ドル(約4000億円)で売却した。売り手はサブプライムローン危機の下で短期資金の調達ができず、物件売却を迫られた。買い手となったファンドの背後には、中東のカタールとクウェートの投資家がいると報道されている。日本にも、この大波は届くのだろうか。

本間 純