最近、週刊誌やテレビの報道番組などで、オフィスビルの空室増加を伝える特集が相次いでいる。アエラ(6月16日号)や週刊文春(6月19日号)など、普段はオフィス市況など取り上げない雑誌までも、センセーショナルなタイトルで、空室を抱える新オフィスビルの現状を伝えている。

 こうした記事の内容の良しあしはともかく、一般誌が取り上げるほど、空室を抱える新築ビルが増えているのは事実だ。オフィスの移転・拡張を望む企業も大半は様子見の状態で、移転の成約事例が減ってきている。

 そんな中で気付くのは、「完成すると評判がよくなりテナントが決まるビル」と、逆に、「完成後は契約が決まらなくなるビル」があることだ。例えば、4月に完成したある大型ビルは、完成前は「駅からビルまでの道が繁華街で、周辺環境が良くない」と、否定的な見方をするオフィス仲介会社の声をよく聞いた。しかし、完成してみると「高層階の眺望がいい」、「作りがしっかりしている」と評価する声も聞くようになった。6月上旬時点で、2~3フロアを残すところまでテナントが決まっている。

 一方で、完成すると評判が悪くなるビルもある。中小規模で、2~3年前にオフィス開発に乗り出したデベロッパーなどが建てたビルが多い。「マンションに使うようなぺらぺらの外装材や内装」、「1フロアの面積を無理やり増やしているため、不整形で使いづらい」といった感想を耳にする。ビル所有者のファンドが強気な賃料設定を崩さず、全フロアが空いたままの物件ある。

 実際にテナントが入居を決めるかどうかは、賃料水準や立地によるところが大きいだろうが、ビルそのものの魅力も無視できない。市況が悪化したときにこそ、デベロッパーの企画力や設計力が問われるのではないかと感じた。

岡 泰子