リプラスが325億円超の負債を抱えて倒産した。主力事業の一つであった賃貸保証事業が破綻すると、顧客のマンションオーナーや管理会社のなかには、家賃の未回収リスクにさらされるところも出てくる。いま破産管財人がスポンサーを探しているところで、できるだけスムーズに事業が承継されることを望んでいる。

 不動産会社の倒産、経営破綻が止まらない。破綻を招いている原因のほとんどは、本誌の本間記者がこのコラムの「窒息寸前の不動産融資」で書いたように、融資環境の悪化にある。金融機関からはリファイナンスを受けられず、保有資産を処分して借金の返済に充てようにも、買い手側も資金調達できないのだから取引が成立しない。こうして資金繰りが行き詰まり、あっという間に破綻してしまう。

 ただ、足元の不動産市況を見ると、分譲マンション市場こそ悪化しているが、これ以外の不動産のファンダメンタルズはまだ堅調だ。先日、本誌でREIT(不動産投資信託)が運用する物件を分析したところ、需給バランスが悪化しているといわれている賃貸住宅市場が意外と好調であることがわかった。賃貸オフィス市場も高水準ビルの賃料動向は下落傾向にあるものの、今の運用実績はさほど悪くない。

 最近、不動産投資市場においては、プロジェクト・ファイナンスやアセット・ファイナンスの手法が本当の意味で確立していなかったのではないだろうかと思うようになった。昨年あたりから「ノンリコースローンといえども、借り手の信用力を重視する」という話をきくようになった。今年に入って、金融機関はコーポレート・ファイナンス中心に方向転換したとも聞く。

 ある不動産関係者は「取引しようとする不動産の収益性は高いのに、金融機関が引いてしまうという状況にある」と嘆いていた。融資によって企業や物件の選別が極端に進みすぎているなかで、あらためて不動産ファイナンスのあり方が問われている。いまこそ、不動産が持つ収益性を適切に判断して、リスクに見合ったリターン、リターンに見合ったリスクを確保するプロジェクト・ファイナンスやアセット・ファイナンスが求められている。三井や三菱のような財閥系や大手不動産会社じゃなければ怖くて貸せない、というわけではないだろう。

徳永 太郎