景気先行きDIと東証REIT指数の推移(クリックで拡大します)
景気先行きDIと東証REIT指数の推移(クリックで拡大します)

 最近は何かと物入りなうえに、景気の先行きが不透明さを増しているとあって、無駄な出費をしないように心掛けている。何か欲しい物がある時に考えるのは、この出費を投資で回収するとしたら、いくらの元手でどれぐらいの期間がかかるかだ。低金利が続いている日本では、低リスクで回収しようとするとかなり苦労するから、自然と出費の意欲が削がれるというわけだ。

 ところが昨今のREIT(不動産投資信託)の投資利回りは、この気持ちを揺るがすのに十分な水準になっている。なかには年換算で40%などという銘柄も出ている。投資法人としての将来の存続性への懸念が投資口価格を押し下げた結果だろうが、少なくとも利益は継続して出しており、解散価値を考えると、少々下げすぎだと個人的には思う。

 右上の図は、内閣府が毎月公表している景気ウォッチャー調査に基づく2~3カ月後の景気見通しを示したグラフだ。景気見通しはDIという指数で示され、数字が大きくなると「景気が上向く」と考える人が多いことを示す。DI値50がちょうど「上向く」という見方と「下がる」という見方が拮抗(きっこう)するラインとなる。ここに時価総額の推移を表す東証REIT指数を乗せると、人々の景況感とREITへの投資の関連がみえてくる。REITは2006年まで景況感とゆるやかに連動しながら投資資金を集め、着実に成長を遂げてきた。ところが2007年に入ると、景況感とは関係なく一気に投資資金がREIT市場に流入。REIT指数を押し上げた。これを見る限りは、2007年のREIT市場はある種のバブルだったと言わざるをえない。

 優良な投資対象として期待が大きかった分、その反動は大きく、景況感の落ち込みとともにREIT価格も現在の水準へと低下した。10月9日にはニューシティ・レジデンス投資法人が民事再生法の適用を申請し、いったん上場市場から退場することになった。このことも投資家の投資意欲に影を落としている。いま、REIT市場は初めての本格的な調整局面を迎えている。しかしREITが持つ安定配当という長所は、低利回り商品が多い日本にあっては依然、魅力的なはずだ。景気後退の懸念が高まっているなかではあるが、制度改正や合従連衡を含め、投資家の信頼回復に向けて業界全体の取り組みが必要だろう。

三上 一大