混乱を極める不動産市場に、明るい話題を提供してきたのがドイツのファンドによる積極的な物件取得だ。MIPIMのパネルディスカッションに出席したSEB Asset Managementの不動産投資責任者、蔡財順(Chua Choy-Soon)氏は、日本の不動産市場に関して「賃貸住宅が値下がりしており、投資妙味がある」と語った。

 同氏は日本を「ドイツと同様に安定したマーケットで、長期的な投資に向いている」とみている。なかでも、人口が増加傾向にある東京の賃貸住宅については、「景気の影響を受けやすいオフィスや店舗に比べて、収益が安定しており魅力的だ」と話す。

SEB Asset Managementの不動産投資責任者、Chua Choy-Soon氏(中央。写真:MIPIM)



 SEB Asset Managementはスウェーデンの金融機関SEBのグループ企業で、フランクフルトに本社を置くファンド運用会社だ。運用中の不動産は2008年末で117億ユーロ(約1兆6000億円)。Chua氏はシンガポール政府投資公社GICの不動産部門から転職し、2003年からマネジングディレクターを務めている。

 同社は2007年4月に日本の不動産への投資を開始しており、2008年1月にはアジア・ファンドを通じて戸数165の賃貸タワーマンション、パシフィックタワー愛宕山を取得している。Chua氏は物件の売り主となった、パシフィックホールディングスの経営破綻にも触れながら、ディストレスト・アセットの取得機会が増えているとの見方も示した。

 「長期的に見ればアジアの成長は間違いない。年に何件取得するといった目標は持たないが、これまで以上に投資していく姿勢に変わりはない」(Chua氏)。東京のほか、香港、シンガポール、シドニーなどの先進都市に投資していく意向だ。2008年後半から急激に進んだ円高ユーロ安については、為替ヘッジを使うため影響を受けないとの考えを示した。

 なおドイツでは、個人投資家が株安を嫌ってオープンエンド型の不動産ファンドに資産を移す動きが広がっている。不動産取引市場が停滞するなか、欧州でもその積極的な姿勢が目立つようになった。一方、株安でポートフォリオが傷んだ機関投資家による資金の引き出し(換金売り)が相次いだことから、2008年後半にはこれらのファンドの償還停止が相次いだ。SEB Asset Managementが20年間にわたり運用するSEB ImmoInvestもその一つだ。

 市中の銀行窓口などでいつでも換金できるのがドイツのオープンエンド・ファンドの特徴だ。しかし、多額の償還要求を一度に受けた場合、ファンドは現金を確保するために物件を悪条件でたたき売る必要に迫られる。償還停止はこうした損失を避け、他の投資家の資産を守るために実施した。

 SEB ImmoInvestは、2008年10月の償還停止後も引き続き投資家を募集し続け、2009年1月までの3カ月で9000万ユーロ(約120億円)の資金を集めた。同社はこれを「顧客からの信頼を示すもの」と発表で述べている。償還停止措置はまもなく解除する予定という。

(本間 純)

本間 純