日経不動産マーケット情報7月号では、二つの分析記事を掲載しました。「不動産業向け融資の動向」、「不動産会社の3月期決算を読む」です。これらを読むと、不動産投資市場の今が見えてきます。

 不動産業向けの融資動向を見ると、主要11行の融資残高が1年間で1.5兆円も減少したことがわかります。破綻先や破綻懸念先への債権など、金融機関の収益を圧迫する「リスク管理債権」が増えており、不動産業向け融資の割合を抑制する動きがまだ続いているのです。記事のなかでは「投資活動の妨げになる」として、金融市場の正常化を望む声も紹介しています。

 一方、不動産会社各社の2009年3月期の決算を見ると、主に分譲マンション事業の不振が響き、減益となったところが目立ちました。ただ賃貸ビル事業が堅調だったことから、売り上げを伸ばした企業もあります。大手10社の不動産保有高は1年間で1兆円以上増加し、14兆円強に達しました。この1年に関しては、積極的に投資が進んだと言えるでしょう。しかし、2009年度については投資を抑制する企業も多く、足元では拡大傾向にブレーキを踏む動きが見られます。

 7月号の売買レポートでは、1000億円を超える大型売買となった「AIG大手町ビル」のほか、東京ミッドタウン、赤坂榎坂森ビル、中目黒センタービルなどの取引を掲載しています。「オフィス市況トレンド」では、新築ビルへの移転を取りやめるケースが相次いだことを伝えています。毎月掲載している「オフィス移転・賃料調査」は新宿区と多摩地区を取り上げました。西新宿の超高層ビルの成約賃料は一段と下落し、1坪あたり共益費込みで2万円台となったもようです。

徳永 太郎