さて、不動産市場を取材する筆者の目から見て、菅氏の提案のなかで最も意義があると思われるのは、市場の透明性に関するものである。提言5の「地価認定の一本化」、提言7の「土地情報の整備、公開」、提言8の「土地行政の一本化」がこれにあたる。

地価の透明化に熱意

 役所からはいくらでももったいぶった理由が出てくるだろうが、公式な地価調査が4種類(地価公示、都道府県地価調査、相続税路線価、固定資産税路線価)も併存しているのは縦割り行政の弊害にほかならないと筆者も思う。また、これらの地価も実勢価格からの乖離(かいり)が激しく、実際の取引では時系列のトレンドを類推させる程度の役割しか果たしていないのが実情である。

 最近では国土交通省もそれなりに努力し、「土地総合情報システム」で実勢価格を収集・公開しているが、詳細な地点情報を欠いたアンケート調査がベースなだけに隔靴掻痒(かっかそうよう)の感がある。かつて菅氏が提案し、また英国、フランス、オーストラリアや米国の多くの州で実施されているように、登記システムによる実勢価格の一元管理が理想である。

 これまで不動産登記(法務省)への実勢価格掲載については、霞が関の検討会で何度も議論が出ては消えてきた。縦割り行政の問題があるほか、買い手との情報の非対称性を利用して利ざやを抜くことを商売にしてきた不動産会社の一部が、プライバシー保護を表向きの理由に掲げて反対してきたのが理由だ。

 しかし個人資産の7割を占め、さらに年金基金や生保の有望な投資先でもある不動産市場の透明性維持は、業界の利害を超えて政治が判断すべき問題だろう。個人・企業を問わずすべてのプレーヤーにとって、価格の透明性は何をおいても公正な市場の基本だ。ある調査によると、日本の不動産市場の透明性は世界で26位。もちろん先進国では最低レベルだ(参考記事)。開示の対象を法人の取引に限定するなど、やりようはいくらでもある。

 菅氏はこれら9カ条を述べる前段で、「都市の土地は特別なものという認識」を持つべきと主張している。持って回った言い方だが、要は都心部の土地を郊外や農村と明確に区別し、高度利用せよとの主張である。日本にも一応のゾーニング(用途地域指定)規制はあるが、欧州と比較するとかなり私権制限が緩く、土地の利用効率を損なっていることも指摘している。

 高層タワーマンションの隣に工場や自動車教習所が広がる光景は、欧州には見られない日本独特のものだ。菅氏の論旨を私流に解釈すると、決まり切った条件さえ満たせばほぼ何でも建てられる建築確認申請ではなく、建築計画を事前審査する許可制度に移行することが検討されるべきだろう。


若き日の菅氏。「土地問題への提言とQ&A」より