REIT(不動産投資信託)の勢いが止まりません。昨年は4年半ぶりの新規上場となるケネディクス・レジデンシャル投資法人にはじまり、商業・オフィス系のアクティビア・プロパティーズ投資法人、物流・商業系の大和ハウスリート投資法人、物流特化のGLP投資法人と4銘柄が上場しました。今年に入ってからも住宅特化のコンフォリア・レジデンシャル投資法人、物流特化の日本プロロジスリート投資法人が相次ぎ上場しています。さらに外資系を含む複数の企業がREIT上場を準備中。物件取得、増資、借り入れ…と、毎日のように何らかのIRが行われ、いっときの停滞が嘘のような状況です。

 3月号の特集「2012年の売買事例分析」では、こうした旺盛な投資意欲で市場の主役に返り咲いたREITを含む、不動産売買市場の動きを解説しました。タイトルはずばり「景気に先立ち不動産市場回復へ」。本誌が昨年1年間で報じた事業用・投資用不動産の売買事例は1205件で、2011年からは1割ほど増えました。取引金額は、把握できただけでも約1兆8700億円に及びます。特集のなかでは大型取引の一覧や、再販物件の取得時期別価格変化率、都心5区のオフィスビルの利回り、賃貸マンションや土地の取引価格といった興味深いデータを多数、掲載しました。

 今号のもう一つの特集は「2012年の賃料・企業移転分析」です。大型ビルの竣工ラッシュに伴い、東京都心におけるオフィス需給の大幅悪化が懸念された昨年ですが、高い耐震性能やBCP(事業継続計画)対応が評価されて、新築ビルのテナント需要が大きく伸びました。老朽化した自社ビルから最新の賃貸ビルに移転する動きも活発。Aクラスビルでは賃料がすでに底を打ちました。特集では企業移転やオフィス賃料の動向を分析し、グラフと表で詳細に解説しています。売買市場の特集記事と併せ、今後の市況を占う材料としてご活用ください。

 売買レポートはパナソニックが御成門のオフィスビル2棟を売却した事例や、ドイツ銀行が大阪・梅田の築浅ビルを取得した事例など20ケースを収録。オフィス市況トレンドでは、御茶ノ水駅近くで2月末に完成するワテラスや、東京駅前のJPタワー、銀座の歌舞伎座タワーといった注目ビル7棟の入居動向をお伝えしています。

三上 一大