かつて北海道のアルファリゾート・トマムに泊まったことがあります。北海道を代表するスキーリゾートとして一世を風靡した同物件ですが、開発・運営会社の財政悪化に伴い、メンテナンスの品質が低下。タワーホテルの外壁があちらこちらで剥離するなど、その凋落(ちょうらく)ぶりはひどいものでした(関連記事)。あれから10年。いまや人気リゾートとして復活を遂げています。劣化が進んでいた外壁は特殊な断熱素材で張り替え、燃料費を大幅に削減。堅調な集客と相まって、収益が大きく伸びているそうです。再生を手がけたのは星野リゾートです。日経不動産マーケット情報8月号では、同社の星野佳路社長へのインタビュー記事を掲載しました。星野リゾートが7月12日に上場したREIT(不動産投資信託)について、その目的や組み入れ資産に対する考え方を率直に聞いています。さらに、宿泊施設の運営ノウハウや同社の海外展開を含めたインタビュー全文を、ウェブサイトに掲載しました。併せてご覧下さい。

 星野社長は観光産業の振興に力を注いでいますが、政府も観光立国の実現に向けて、観光立国推進基本法の制定、観光立国推進基本計画の策定、観光庁の創設と、着実に歩を進めています。その背景の一つとして横たわるのが人口問題。あらゆる分野において、「少子高齢化」への対応は避けて通れない重要な課題となっています。国土交通省などは昨年から、高齢者向け施設の供給を進めるため、専門REITの実現に向けて検討を進めてきました。すでに新生銀行が2014年度にもヘルスケアREITを立ち上げることを表明していますが、市場を確立していくためにはどのような課題があるのでしょうか。8月号の特集では、この分野で大きく先行する米国の市場を、三井住友トラスト基礎研究所の風岡茜副主任研究員に分析してもらいました。米国ではすでに8兆円近いヘルスケアアセットがREIT所有の下で運営されており、その投資戦略も多様化しています。KPMGヘルスケアジャパンの松田淳取締役・パートナーへのインタビューを通じて、米国の成長から何を学ぶべきかを整理しました。

 もう一つの特集は、毎年恒例の名古屋です。市中心部ではホテルの開発が活発になっています。イベントや学会などの開催が多く、もともと宿泊需要が強い街ですが、景気回復に伴ってビジネス客も大きく伸びています。一方で、オフィスの取得ニーズはやや停滞が続いています。高止まりしている空室率に加え、相次ぐ大型ビル完成で2015年に19万m2を超える床が供給され、市況の悪化が懸念されているためです。とはいえ、常に取引が発生するのが大都市。特集ではオフィスビルの売買を含め、この1年間の主な取引64件を地図と表にまとめました。市場を概観する材料としてご活用下さい。

 六本木ヒルズの東側では、森ビルなどによる「六本木五丁目西地区プロジェクト」が進行中です。ロアビル(六本木共同ビル)から東洋英和女学院、アミューズ・ミュージカルシアターに至る一帯を再開発するもので、このエリア内にある港区所有の鳥居坂グラウンドを、森ビルと住友不動産が取得する見通しとなりました。売買レポートではこの案件をはじめ、ヨドバシカメラによる原宿のコクドビル跡地取得、コナミグループの銀座テアトルビル取得など19事例を収録しました。

 今月のオフィス市況トレンドは、四半期ごとに実施している成約賃料調査。東京、神奈川、大阪のオフィスエリア28カ所について、複数の仲介会社にヒアリング調査しました。大規模ビルの賃料が半年前よりも上昇したエリアは7カ所。残りは横ばいです。賃料は底打ち傾向が鮮明になっていますが、回復のスピードはかなりまだら模様といえるでしょう。エリアごとの成約水準は、本誌8月号のほかウェブサイトでも掲載しますので、ぜひご確認ください。

三上 一大