日経不動産マーケット情報の編集部からは東京タワーを眺めることができます。ここしばらくは5色のランプに彩られ、大展望台には「2020」の文字が浮かび上がっていましたが、オリンピック・パラリンピックの招致が実現した今、その役割を終えて通常のライトアップに戻されました。やや寂しい気持ちもしますが、お祭り気分もそこそこに、2020年に向けて本格的な準備をスタートしなければなりません。交通網の整備、バリアフリーの推進など、この7年間で東京は大きく変わることでしょう。東京の国際競争力を高める絶好の機会となるよう、小誌ならびに日経BP社では様々な角度から情報発信していく予定です。

 さて期待の半面、街づくりの足かせとなりそうなのが建設費の高騰です。こちらに書いたように、東北大震災の復興需要などを背景に、すでに資材や労務費の上昇が顕著となっています。東京五輪の会場となる予定の「武蔵野の森総合スポーツ施設」新築工事の入札でも、それを理由にゼネコン各社が応札を辞退。発注者の東京都は9月6日、予定価格を3%~8%上乗せしての再公募に追い込まれました。

 当然、民間の建築工事も大きな影響を受けています。小誌10月号の特集では中規模オフィスビルの開発動向をまとめました。タイトルは「不動産各社が棟数拡大へ、本格回復に向けコスト増のジレンマ」。"コスト"には建設費が含まれており、デベロッパーが目下抱える課題を端的に表しています。中規模ビルは稼働率や賃料が上昇傾向を見せており、投資家の注目を集めています。今後、オリンピックに向けての都市整備が重なることで建設費のさらなる高騰が予測されますが、デベロッパー各社がコスト増にどう対応し物件を供給していくのかが気になるところ。特集では都心5区で進行中の67プロジェクトに加え、大阪市内の13プロジェクトも紹介していますのでご覧ください。

 オフィス市況トレンドでは、東京23区で2012年から2014年にかけて完成する大型オフィスビル51棟の稼働率およびテナント内定率を徹底調査しました。その結果、2013年竣工物件の内定率が9割弱に達し、テナント誘致の中心はすでに2014年完成物件に移っていることがわかりました。ただしエリアによって需要の濃淡があり、すべてのビルが好調というわけではありません。記事では51ビルそれぞれの内定率を明らかにしており、必見です。

 不動産業界で「環境」がキーワードになって数年が経ちます。この間、国内外の複数の環境認証が登場し、デファクトスタンダードがどこになるのか見えない状況ですが、新たにCASBEE(建築環境総合性能評価システム)の不動産マーケット普及版がラインアップに加わります。格付けの根拠となった点数が評価項目ごとに明らかにされる、透明性の高いしくみが特徴。今秋からの本格スタートに先立ち、認証を行っていた38物件の結果が先ごろ公表されました。10月号のトピックスでは、各ビルの評点を横並びで比較しました。目立つのは築年の古いビルの健闘です。例えば築31年の物産ビルは最高位の「S」に格付けされました。古いにもかかわらず、なぜ高い格付けを取得できたのか。その理由をトピックスでぜひご確認ください。

 なお、個別ビルの評点を集計したエクセルファイルと、アナリストによる詳細な分析レポートを収録したCD-ROMも用意しました。認証取得を考えているデベロッパー・ビルオーナー、開発や認証取得に携わるゼネコン・設計事務所、不動産価値を評価する鑑定事務所・金融機関にとって有用な資料になっています。詳細はこちら

 売買レポートは、アジア・パシフィック・ランドやセキュアード・キャピタルなどが1170億円で取得した芝パークビル(通称、軍艦ビル)、フォートレスが420億円で購入したシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル、読売新聞が235億円で落札した東京電力銀座支社本館など、23事例を掲載しました。その他、SIA不動産投資法人の上場や日本コカ・コーラの移転など、10月号も興味深いニュースが満載です。

三上 一大