強気と弱気が交錯する市況――。日経不動産マーケット情報では半年に一度、不動産市場に詳しいアナリスト19人の協力を得て、オフィスビル賃貸市況の将来予測を行っていますが、2015年1月号の調査は冒頭の一文が示す結果となりました。景気の先行きやオフィス需給の動向について見解が分かれ、来年から再来年にかけて先が見通しづらい状況になっています。各アナリストの意見は合理性を持ち、それぞれに「なるほど」と思わされるのですが、指し示す未来はおのおの違っている……。正解はわかりません。皆様も各意見をご確認いただき、複雑な様相を呈するオフィス市況をご自身で読み解いてみてください。

 米国で金融の量的緩和政策終了が決定し、金利引き上げの時期が模索されるなか、日本では反対に金融緩和が拡大しています。不動産業向け融資残高は2014年9月末時点で80兆円目前に迫り、史上最高を更新。3月からの6カ月間で1兆円弱も増加しました。銀行間の競争で金利はさらに低下傾向にあります。不動産会社にとっては良好な経営環境のはずなのですが、日本銀行のアンケート調査では足元の景況感がやや悪化しているのが気になるところ。1月号ではこうした不動産業向け融資の動向も解説しました。

 不動産投資の現場では、米ブラックストーンが日本GEの住宅ポートフォリオを約2000億円で買収したり、再開発事業にからんでみずほフィナンシャルグループが銀行旧本店ビルを1590億円で買い戻したりと、相変わらず大型の取引が続いています。1月号の売買レポートでは注目の取引事例21件を収録。これらを含む119事例を一覧表にまとめていますので、ぜひご覧ください。

 暮れも押し迫って参りましたが、今年1年、日経不動産マーケット情報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。このたび編集部は新たな記者を迎え、今後さらに充実した情報をお伝えしていく所存です。2015年も引き続きよろしくお願い申し上げます。

三上 一大