ロングライフビル推進協会(BELCA)は11月15日、不動産の物的リスクを評価するための「不動産投資・取引におけるエンジニアリング・レポート作成に係るガイドライン」を改訂した。地震PMLの定義を明確にするなど、利用者にもエンジニアリングレポート(ER)の前提条件や業務範囲をわかりやすく伝えることを意図している。ほかにも、建物環境リスク評価項目の整理、順法性調査事例の掲載、再評価への対応などが改訂のポイントとなっている。

 地震による予想最大損失額を示すPMLに関しては、「値が小さいほどよい」と受け止められたり、手法が異なるのに数値だけで物件の優劣を比べたり、根拠の伴わない解釈がなされることがあった。改訂では、日本建築学会の分類を踏まえて、PMLに三種類の定義があり、これによって評価値が異なってくることを解説。どの定義に基づく評価であるかを、報告書に明記する必要があると記した。

 建物環境リスク評価については日本の不動産の実情を考慮し、主たる調査項目、その他の調査項目、留意事項の3段階に整理した。主たる調査項目として、アスベストとPCBを位置付けている。順法性に対する要求が多様になっていることを受けて、ガイドラインの内容も拡充した。法令違反が疑われる事例を多数、図示し、併せてレポート作成時の対応方法を説いている。

 さらに、いったんERを作成した物件の再評価が増えていることから、再評価時の注意として、竣工当初の調査時点で算出された修繕・更新費用より、金額が大きくなるケースがよく生じることを付記した。東日本大震災を受けた対応としては、浸水実績図や洪水危険区域図、浸水予想区域図などが活用できることを示している。

 ガイドラインの2011年版は約300ページ、定価は税込みで6500円。BELCAのウェブサイトで購入の申し込みができる。