日総第23ビル(写真:日総ビルディング)
日総第23ビル(写真:日総ビルディング)
図1:エキスパートオフィスの位置づけ(資料:日総ビルディング)
図1:エキスパートオフィスの位置づけ(資料:日総ビルディング)
図2:セキュリティ・設備仕様(資料:日総ビルディング)
図2:セキュリティ・設備仕様(資料:日総ビルディング)
図3:コスト比較(資料:日総ビルディング)
図3:コスト比較(資料:日総ビルディング)

 日総ビルディングは2012年6月、新オフィスブランド「エキスパートオフィス」を発表、第1号物件として港区虎ノ門3丁目にある日総第23ビルを本格オープンさせた。数人から十数人と少人数ながら、高い創造性や知的生産性を要求される事業者向けに、小型・高機能のオフィスを提供する。これによって面積あたりの賃料を高め、大規模オフィスビルの大量供給で苦戦を強いられている小規模ビルの収益性向上をめざす。

弁護士・公認会計士やベンチャー企業をテナントとして想定

 エキスパートオフィスは、主なテナントとして弁護士・公認会計士といった士業(さむらいぎょう)やベンチャー企業、新興企業などを想定する。このようなテナントは大規模オフィスビルの小分けスペースや中小ビルのワンフロアなどを賃借することが多かった。

 しかし、日総ビルディングによれば、大規模オフィスビルは大面積の一括賃貸を好む傾向が強いことからそもそも借りにくく、借りられたとしても小分けスペースのテナントに対して適切な保守やメンテナンスが行き届かないことが多かった。中小ビルでは、このようなテナントが満足できる機能や性能を満たしていないことが多いという。

 今回のエキスパートオフィスでは、最新の大規模ビルに匹敵する機能・性能を実現させた。具体的には、多重セキュリティを設けた正面エントランスやエレベーターを設置している。執務スペースには、遮音性に優れた間仕切りを設けるとともに、電気工事やLAN敷設を済ませてテナントの入居時の手間を省いた。テナント共用の複合機も備えている。

 また、高い創造性や知的生産性を実現するためにはコミュニケーションや協業できるスペース(日総ビルディングは「サードプレイス」と呼ぶ)の充実が必要と考え、複数テナントで共有するラウンジスペースやミーティングスペース、会議室を設けた。以上の機能のために、日総第23ビルでは約6000万円の改修費を投じている。

面積あたりの賃料は高いがテナントの費用は抑制できる

 賃料については、面積単価は高くなっているが、人数あたりの賃料はむしろ抑えられると日総ビルディングは主張する。エキスパートオフィスでは、一般的なオフィスで必要な会議室や水周り設備およびそれらに至る導線スペースが不要になり、されに清掃費や電気・空調費、プロバイダー費、コピー機リース費なども賃料に含まれているためだ。

 例えば10人程度のオフィスを考えた場合、一般的なオフィスでは40坪程度が必要になり、これに虎ノ門の標準的な賃料である1万5000円/坪をかけると60万円/月になる。ここに清掃費や電気・空調費、プロバイダー費、コピー機リース費などの各種費用が加わる。これに対してエキスパートオフィスでは、約16坪の執務スペースのための50万円弱/月だけで済む。このため、テナントのランニングコストは30%~40%削減できると日総ビルディングは試算する。

 同様に初期コストも60%~70%削減できるという。一般的なオフィスでは賃料12カ月分の敷金に加えて入居工事費が必要になる。これに対してエキスパートオフィスでは、4カ月分の入会預託金だけで入居工事費も不要なためだ。

1フロアの賃料収入は60万円弱/月から約100万円/月に拡大

 ビルの収益性は、エキスパートオフィスにすることで向上できると、日総ビルディングは言う。実際、日総第23ビルの基準階面積は約39坪で、これに虎ノ門の標準的な賃料である1万5000円/坪をかけると60万円/月弱になる。一方、エキスパートオフィスとして募集している3階、8階、9階の1フロアあたりの賃料は100万円前後となっている(2階はフロアの4分の1を共有会議室や共有複合機の設置エリアに使っているために約75万円)。共用のラウンジスペースやミーティングスペースとしたために失った1階の店舗賃料を差し引いても、テナントの入居率が十分ならばビル全体の賃料収入は増加する計算になる。

 今後に向けては、第2、第3のエキスパートオフィスを展開していきたいと日総ビルディングはいう。第2弾の候補は新横浜にある日総第16ビルだ。第3弾以降は東京都心部や横浜エリアでの展開を検討しているが、まだ具体化していない。エキスパートオフィスにするためには元のビルの形状が重要で、フロアを小分けしても執務スペースが細長くなりすぎず、窓も小さくならない必要がある。しかし、同社の手持ち物件には、このような形状を満たすものが少ない。このため、同社は新たにビルを購入してエキスパートオフィスに改修することも視野に入れている。


[物件の概要]
物件名:日総第23ビル「エキスパートオフィス 虎ノ門」
所在地:港区虎ノ門3-8-25(住居表示)
最寄り駅:地下鉄神谷町駅徒歩4分
面積:土地200.74m2、延べ床1404.13m2
構造、階数(地上/地下):S造、11/0
用途:事務所
竣工:2006年
基準階面積:129.06m2(39.04坪)
開業:2012年夏(予定)


《変更情報》2012年6月25日
日総ビルディングからの申し出により「図4:料金表(資料:日総ビルディング)」を削除しました。