国土交通省は、住宅を対象とした不動産価格指数の試験運用を8月29日から開始した。取引事例の成約価格を用い、国際指針に基づいて作成したもので、不動産の価格変動をつかむ警戒指標としての役割が期待されている。

 用途は、更地・建物付土地、マンション、これらを統合した住宅総合で構成される。全国、ブロック別(北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄)、都市圏別(南関東、名古屋、京阪神)を対象地域として月次で算出する。速報版と確定版があり、速報版は取引月からおよそ5カ月後に公表する。

 例えば、経済危機の不動産価格への影響を地域ごと、用途ごとに観察することができる。政府機関や日本銀行などの経済政策の基礎資料となるほか、全国規模の住宅投資ファンドの運用者にとっては地方の価格動向把握に役立つ。

 欧州経済危機が拡大した理由の一つとして、不動産バブルの崩壊に際し、既存の物価指数では価格変動を的確に把握できなかったことが指摘されている。新しい指数によって、経済に影響を及ぼす不動産市場の動向を国際的に比較することも可能になる。

 指数は、国交省が収集している不動産取引価格情報を基に作成した。成約価格の捕捉率は取引数の約3割、年間約30万件だ。不動産価格指数の整備は、7月に政府が閣議決定した日本再生戦略の不動産流通市場の活性化策の一つとして位置づけられている。国交省はこれに続き、商業用不動産の価格指数の開発に着手する。