流ちょうな英語で講演した星野佳路社長(写真:PERE)
流ちょうな英語で講演した星野佳路社長(写真:PERE)

 9月12日に開催されたPEREフォーラム:ジャパン2012。ランチを挟んだ午後の部には、特別プレゼンテーションとして、星野リゾートの星野佳路(よしはる)社長が登場した。星野氏の講演には、日本の観光産業にいまだ成長の可能性が残っていること改めて認識させる力があり、参加者の注目度も高かった。

 星野氏はまず観光庁のデータを基に、日本の旅行消費の規模23兆8000億円(2010年度)のうち、約90%が国内旅行で占められている現状を説明した。さらに、アジアを含む世界の観光マーケットは順調に拡大していることに触れ、海外からの旅行客の取り込みには大きな成長余地があることを示した。

 一方で、日本の伝統的な宿泊施設である旅館は、経営難などから減少傾向にあることも指摘した。そして、旅館の経営者が直面している課題として、小さな経営規模と高い人件費、オフシーズンへの対応、割高な交通輸送コストの3点を挙げた。

 これらの問題への対策として、星野氏は自社で運営する旅館を例にとり、徹底した合理化の必要性を説いた。具体的には、一人の従業員が複数の業務を行うマルチタスク、複数の施設間で従業員を横断的に活用する、柔軟な運営戦略について紹介した。

 旅館を中心に全国で29施設を運用する星野リゾートは、スキーリゾートの従業員を夏場に他の地域で活用するといったコスト対策を徹底。2011年の震災直後は旅行需要が停滞したが、5月以降に需要が急回復し、旗艦施設の「星のや軽井沢」では年間平均客室収入(RevPAR)3万9000円、利益率21.7%といずれも前年並みを維持した。

 オフシーズンへの対応では、安定した需要が見込めるカップルやファミリー層、そしてコンファレンス需要をいかに取り込むかがポイントになると述べた。参入が相次ぐ格安航空会社(LCC)の影響で、割高な輸送コストは、一部緩和される方向にあると期待感を示した。